園池公毅氏の植物の形には意味があるを読んだ。この本はタイトルそのままで、植物の形態がなぜそのようになっているのかを思考実験で考えてみようという本だ。
葉が平らで、表が緑、裏が白い理由
植物の葉というのは大体平らで、表は濃い緑色、裏はうっすら薄い緑色になっていることが多い。平らになっているのは単純にその方が太陽の光を受けやすいからだろう。サボテンは突き出ているとげのような部分が葉なので、平らではない。サボテンは茎の部分が緑色で、実はそこで光合成をおこなっている。サボテンの中には球形の物もあり、全く平らでないものもある。光合成は太陽光、二酸化炭素、水が必要だが、サボテンが生えているようなところは水が少なく、太陽光は強くても、その光の量に見合った十分な光合成ができない。
葉の内部を見ると、表面には細長い柵状の細胞が規則的に並んでいるが(柵状組織)、裏側は楕円形の細胞が海綿のように並んでいる(海綿状組織)。細胞の内部には水分があるが、細胞と細胞の間は空気が覆っている。表面から進入してきた光は柵状組織を通過し、海綿状組織に到達するが、そこの細胞の内部で乱反射し、元来た方向に戻される。裏側から侵入した光も、乱反射で元来た方に戻されるが、葉緑素は柵状組織の方にたくさんあるので、損失は軽微だろう。葉の裏側が白っぽく見えるのは、光が乱反射しているからで、色々な角度・方向に光が跳ね返っているからそのように見えるのだ。
葉の先端が細長く、伸びている理由
葉の表面の水滴が先端から落ちやすくなっているという説がある。葉の表面に水滴があると、気孔が塞がれる問題がある。光合成に必要な二酸化炭素は気孔から侵入し、細胞と細胞の隙間に拡散することで吸収される。その途中に液体があると、拡散速度が一万倍遅くなるという。また、細胞の中の二酸化炭素が少なくなり、欠乏すると、光合成の機能が破壊される恐れがある。また、葉の表面の水滴はレンズのような働きをする場合もあり、その場合は光量が増すが、植物の光合成はある量以上の光を受けても、それに比例して光合成量が増えない(光合成量が飽和してしまう)ので、効率的な光合成ができない可能性もある。