隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

楽園の真下

荻原浩氏の楽園の真下を読んだ。

本作は北上ラジオ第9回で紹介されていた。
本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第9回 - YouTube

藤間達海はフリーのライターで、目下「びっくりな動物図鑑」という本の執筆中だったのだが、何匹か目のドジョウのような企画で、筆が進まなかった。そんなときに志手島で大きさ17センチのカマキリが捕獲されたという話を編集者から聞き、藤間は俄然興味が湧いてきた。実はカマキリは単なる言い訳で、藤間は以前から志手島に興味を持っていたのだ。志手島は本土から船でしか行けず、片道19時間かかる。船便も週に一往復しかないという、便の悪いところに位置している。その志手島ではなぜか最近自殺者が多発しているのだ。過去2年間で12人の自殺者。藤間は妻を自殺で失ってから、なぜ人は自殺するのだろうということに漠然と疑問を抱いていたことも、その島に興味を持った理由であった。

本書の巻末には参考文献は載せられていないので、具体的にどの本を参考にして、本書を書いたのかわからないが、例えば下のような本であろう。

prozorec.hatenablog.com

なぜカマキリが巨大化したのかという原因の一つに登場人物が寄生虫(ハリガネムシ)が関係しているのではないかと推測し、物語の中でもカマキリからハリガネムシが見つかっている。このことが自殺者が多いということにもつながってくるようになっているのだが、ストーリーはパニック小説的に進んでいって、最後はどうなるのだろうと思っていたら、そうきたかという感じ。上の本のことを知らなくても、この本を読むのに何の問題もないが、寄生虫によって果たしてそんなことが起きるのかという疑問は湧いてくるかもしれないが、全く荒唐無稽の話ではなく、それなりに根拠はあると思える。

北上ラジオではこの本を3時間ぐらいで読めるといっているが、私にはその倍以上の時間が必要で、ほんとにそんなに速く読めるのか?と不思議に思っている。