隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

父を撃った12の銃弾

ハンナ・ティンティの父を撃った12の銃弾 (原題 THE TWELVE LIVES OF SAMUEL HAWLEY)を読んだ。

本書は北上ラジオ第31回で紹介されていた。

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帯にある「少女と父と銃と今は亡き母の物語」という言葉がが本書を一番よく表していると思う。少女はルイーズという名前だったが、父親からはルーと呼ばれていた。ルイーズだと老けた感じがするからだ。父親の名前は原題にある通りサミュエル・ホリーといい、二人は全米を放浪するかのように、1年ぐらいで居場所を転々としていた。だが、ある日ルーが12歳になったときにマサチューセッツ州のオリンポスに移り住んだ。そこはルーの母親の生まれ育ったところで、ルーの祖母もまだ暮らしていた。だが、ルーの祖母と父親の関係は最悪のようで、身ぎれいにしてサミュエルが会いに行っても、にべなく追い返されるありさまだ。だからか、ルーは祖母と会うこともなく過ごしていた。だが、あることをきっかけにして、祖母と会うようになると、それまで知らなかった母親や父親のことが少しずつ明らかになっていくのだ。

この小説はルーが12歳から17歳になるまでの現在進行形の物語と、サミュエル・ホリーの身体に穿たれた無数の弾丸にまつわる過去の物語が交互に進んでいく。なぜ、ルーとサミュエルは全米を放浪するかのような生活をしていたのか、なぜ母親はいないのか、なぜサミュエルには銃創があるのかなどなどが過去の物語で少しづつ明らかになる。現在進行形の部分はルーの成長物語で、過去の物語はルーに語られたわけではないようなので、読者だけが知っている物語だろう。ルーがサミュエルの銃創の過去を知ったとしてもこの二人の関係は変わらないのだろうかと考えてしまった。過去のツケを現在で払い続けなければならないにしてもあまりにも高いツケだ。この物語の一番かっこいいシーンは最後の最後の所だ。映像にしてもかっこいいと思う。

P332に「スカートの縁で目を拭う」と書かれているのだが、原文ではどうなっているのだろうか?こんなことをすれば下着が見えてしまうと思うのだが。