隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

君の顔では泣けない

君嶋彼方氏の君の顔では泣けないを読んだ。本書は北上ラジオの第37回で紹介されていた。

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男女の心が入れ替わった物語だ。そして、入れ替わったまま元に戻らず、15年が経過したところから物語が始まっている。事の発端は、15歳の高校一年の時、坂平陸と水村まなみの中身が入れ替わってしまった。思い当たる入れ替わりのきっかけは、誤ってプールに一緒に落ちたことだ。もう一度プールに落ちてみたけれど、戻らなかった。それから15年たった今の視点と、15年前からの物語を交互に、女性の中に入ってしまった、坂平陸の視点で語られている。

北上ラジオの中で、作者は男か女かわからないと話しているが、どうやら作者は男性のようだ。そのことは本書を読み終えてから調べて分かったのだが、女性がこの小説を読んだときに、このなかで男の陸が女性になって感じた理不尽とか不自由さというのはどのように感じるのだろう。リアルに思えるのだろうか?それともま違和感を感じるのだろうか?私は男なので、実際はどうなのかはわからないが、読んでいて想像できることと、「えっそうなの?」という事と色々あった。男とか女とかを抜きにしても、他人の中に入って生きていくという不自然さや違和感は想像を超える部分が多々あると思うが、人生における選択が自分のためだけではなく、入れ替わる前の相手の事を考えてしまうだろうのも仕方がないことなのだろう。それに、入れ替わりの状況がいつまで続くかわからないのも苦痛だし、いつか終わるかどうかもわからない。この物語は単なる男女の入れ替わりというだけではく、自分の中にある違和感というようなことも描いていて、非常に面白かった。