鴨崎暖炉氏の密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリックを読んだ。本書は、
「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」
という事が裁判所により認定された世界での密室を扱ったミステリーだ。そういう意味ではある種の特殊な世界でのミステリーでもある。ミステリーにおいてなぜ犯人は密室を構成したのかという「なぜ」がこれほどストーリー内で明確に規定されている物語はないだろう。密室が構成されていれば、容疑をかけられたとしても無罪なのだ。そのせいか、3年間で302件の密室事件が起こり、世間には警察に代わり密室の捜査をする密室探偵だとか、密室殺人を代行するものまで存在する世界になっている。
物語は高校生の葛白香澄が幼なじみの朝比奈夜月にイエティを見に行こうと誘われたことから、とんでもない厄介な連続密室殺人事件に巻き込まれるのが本書ので出しだ。ただ、イエティは埼玉にいるらしく、出かけた先は雪白館という山荘で、そこはかってミステリー作家の雪城白夜の持ち物だった。雪城白夜はその屋敷に作家や編集者仲間を集めてホームパーティをし、その時疑似的な密室ミステリーの推理ゲームを行ったことがあるのだが、誰もその密室の謎を解けなかったという逸話が残っている所だ。葛白香澄はイエティを見に行くように誘われ、当然最初は気乗りしなかったが、雪白館に止まれると知って、いそいそと出かけていくのだった。
「六つのトリック」という副題がついているぐらいに、これでもかというように密室事件が出てくる。密室連続殺人事件だ。内容はネタバレになるのであまりかけない。よくも色々と考え着いたものだというのが率直な感想だ。筆者は一時期ライトノベルの賞も応募していたようで、本書も軽い文体で書かれていて、そこも読みやすいと感じた。実際問題密室というのも現実世界ではあまり起きない(というかまず起こりえない)ことなので、あまりにもリアルに描写されても、違和感を覚えるような気がしている。