隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

匿名作家は二人もいらない

アレキサンドラ・アンドリューズの匿名作家は二人もいらない(原題 Who is Maud Dixon?)を読んだ。英語の原題にあるモード・ディクソンは処女作がベストセラーになった匿名作家のことで、本名はヘレン・ウィルコックスだ。プロローグではそのヘレンがモロッコで事故を起こしたようで 、病院で目覚めたところ描写されているのだが、読者はこの時点でヘレンが何者で、何が起きたのかは全くわからない。続く第一部では、物語はフローレンス・ダウトが中心に進んでいく。彼女はフロリダ出身で、作家になることを夢見ている。大学卒業後、書店で働きながら小説を執筆していたのだが、エージェントの目に留まることもはなかった。過保護の母親からまともな職業につくようにせっつかれ、ニューヨークで編集者の職をえた。といっても、キャリアのスタート地点はアシスタントで、仕事内容もパットせず、職場の他の人間の経歴と比べると、自分が何も知らない田舎娘のような気がして、メンタル的に落ち込むことも多かった。それが原因なのか、全然小説も書けなくなくなってしまった。ある時職場の上司と一夜を共にしてから、彼女は転落してしまい、最終的には会社を首になる。生活を維持するために、書き溜めてあった短編をエージェントに送ると、あの有名なモード・ディクソンがアシスタントを探しているという連絡がやってきて、フローレンスはそれに飛びついた。

ここで、ようやくフローレンスとモード・ディクソンであるヘレン・ウィルコックスがつながるのだが、ここまでで全体の5分の1ぐらいの所で、このあと二人に何があって、冒頭のモロッコで事故が起きるのか?フローレンスはどうなるのか?というという事が知りたくて、どんどん読み進めていった。この小説はどちらかというとサスペンスで、ストリー中に謎は散りばめているのだが、その謎を論理的に推理して解いていくという感じではない。ネタバレになるので詳細は書けないが、フローレンスやヘレンに何が起きているのか?誰かが何かを仕組んでいるのか?起こっていることは偶然ではなく、誰かの意図があるのだろと思いながら、読み進めてた。フローレンスは過去の出来事をもとに処女作を書いたようだが、どこまでが実際に起こったことで、どこまでが創作なのかなどなど色々なことが頭の中で渦巻いていて、色々と妄想しながら、読み進めた。早く先がどうなるか知りたくなるようなストーリーだった。この小説は映画化されるようなのだが、確かに映画向きなストーリーだと思う。