隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

骨灰

冲方丁氏の骨灰を読んだ。この小説のジャンルはホラーになるのだと思うが、呪とか祟りの物語。

2015年の東京の渋谷の再開発エリアに県瀬中の高層ビルの地下の工事現場の写真を撮って、いかにも何かの工事の不備があるというようなツイートをしている者がいて、再開発をしている会社のIR部の松永弘光が地下の工事現場に調べに行った。そこで図らずも地下で行われていた祭祀の場所に迷い込み、中にいた人間を外に連れ出したのだが、その男を見失ってしまった。そのことがそこに鎮められていた霊的なものを解放したことになり、光弘には祟りがついてしまうことになり、その霊的なものに操られる事になってしまう。

江戸・東京では数限りなく火災が発生し、多くの人の命が奪われた。火災のために死者の骸は骨まで焼かれてしまい、土に紛れ込んでいて、積み重なっている。それがタイトルになっている骨灰である。そうした骨灰が祟りを起こさずにいるように、人知れず鎮められていたというのが本書の物語の肝。

ホラーと言ってもそれほど恐ろしいような描写は出てこない。が、何かよくわからないものに操られて行き、不可解な行動に自らそれらしい理由を作り出していく様は、何か狂気的なものが感じられた。一つ不気味だったのは、前半の方にあるエピソードで、集合住宅のエントランスから住戸内にあるインターホンが鳴らされるところ。モニターで確認しても誰もいなくて、いたずらかと思っていると、何度も何度も呼ばれるシーンはちょっと不気味だった。夜にこんなことが起きたらちょっと恐ろしい。