隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

君のクイズ

小川哲氏の君のクイズを読んだ。クイズ選手権の第一回Q-1グランプリの決勝戦での出来事。最終決戦に残ったのは本庄絆と三島玲央。7問選手の早押しクイズで、両者とも6問正解になった。但し、本庄は誤答が2問、三島は誤答が1問で、誤答が3問になると失格となるルールだった。そして、その瞬間に驚くことが起こった。本庄は問題を出すアナウンサーが一言も発する前に、ボタンを押し、見事正解し、優勝した。これはどういうことだ?仕込みなのか?やらせなのか?後日番組プロデューサーからは「演出面で不適切なところがあった」が「不正と認められるものはなかった」と発表された。しかし、優勝者の本庄は辞退の申し出があり、トロフィーと賞金は返却されたという。この物語は勝負に敗れた三島がなぜ本庄は一文字も読まれていないクイズに成功したのかの謎を解くミステリーだ。

ストリーの構成は最小に決勝戦の後半の部分で本庄が一文字も読まれないクイズに正解するところが描写され、その後の混乱が語られ、三島がなぜこのようなことが可能だったのかを放送されたクイズ番組を見ながら考えるというようになっている。確かに、早押しクイズでは最後まで聞かなくとも答えの候補が絞られ、回答することは可能であるが、では、一文字も読まれずにどのようにして回答を絞ったのかという事を説得力を持って提示するのが本ミステリーの肝。当然詳細は書けないが、なるほどという感じはした。この二人はクイズにある種人生をかけているというような設定になっているのだが、Q-1を経てからの二人の今後のクイズとのかかわりが対照的なのも面白かった。