隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

アンリアル

長浦京氏のアンリアルを読んだ。内閣府国際平和協力本部事務局分室国際交流課二係というところにひょんなことからスカウトされた警視庁のはみだし警察官見習の沖野修也の物語。国際交流課は非合法組織で、国のスパイ活動に従事している。場合により諜報も防諜も行う。彼は研修期間にもかかわらず、管内で起きた事件を独自に調査して何件かの事件を解決していた。その目的は一日も早く本庁捜査一課に配属されるためだ。彼の両親の乗った乗用車が不可解な交通事故に巻き込まれ、二人とも事故死した。事故を起こした人間の身元もあやふやで、事故自体をもみ消すように警察に扱われた。いつか彼自身の手で真相に辿り着きたいと警察官になったのだ。しかし、あまりにも独断専行の行いが多いことにより、免職こそ免れたものの、国際交流課行きを命じられたのだった。

この小説の時代設定ははっきり書かれていないが、現代とそれほど変わらないと思う。ただ、国内の状況がかなり我々のとは違っている。多数の合法・非合法の外国人が入国しているようで、都内も場所によっては日本語以外の言葉が飛び交っているようだ。また、外国の非合法組織が国内に深く進入してきているようで、縄張り争いに国内の暴力団が負けてしまうようなことも起きている。かなり物騒な世の中になっていて、それだけらこそ色々な非合法活動が日本国内に深く浸透しているという設定になっている。

沖野が国際交流課に追いやられたのは、彼の素行の問題もあるが、彼の特殊能力に目をつけてのスカウトであることが一話目のcase 1で分かる。case 1からcase 4までの4つの事件は実は関連する一連の事件である。この小説に収録されている4話は、とにかく展開が早い。各話の展開も早いが、一連の事件の時間軸もわずか半年くらいの間に起こった感じだ。それと、参考資料としてNHK BS1BS世界のドキュメンタリー3本が載っているのがちょっと驚いた。本が参考文献に上がり、その他にインターネット上の文書とかテレビ番組が同時に掲載されることもあるだろうが、テレビ番組だけというのは、「主要」という風に書いているとはいえ、初めて目にした。