隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

虚構推理

2019-7-30
城平京氏の虚構推理を再び読んだ。この本は2016年の6月に一度読んでいるのだが、この続編にあたる短編集を読んだら、一作目のこの作品のことをあまりにも覚えていないことに気づき、もう一度読む気になったのだ。

妖怪や化け物から「ひとつ目いっぽん足のおひいさま」と呼ばれている岩永琴子。小学校五年生の時に怪異に誘拐され、彼らの知恵の神になることを強いられた存在。そして、左足と右目を失った。第一章の一眼一足はそんな岩永琴子が桜川九郎に一目惚れして、彼女と別れたことを察知して、半ば強引に彼女に収まるいきさつがプロローグ的に描かれているが、物語の本筋はその後の「鋼人七瀬」事件だ。父親殺しの疑いをかけられて失踪していたアイドルの七瀬かりんが真倉坂市のマンション建設予定地で、鉄骨に顔をつぶされて死んでいた。そして、数か月後、真倉坂市に顔をつぶされ、鉄骨を振り回す、七瀬かりんの衣装をまとった怪異が現れ、人を襲うようになった。岩永琴子は真倉坂市の妖怪から「鋼人七瀬」を退治するように依頼されたのだが、「鋼人七瀬」は単なる亡霊ではなかった。

これは以前にも書いたがタイトルに惹かれて読もうと思ったのだが、この作品に関しては純粋なミステリーの範疇には入らないだろう。いかに「鋼人七瀬」を倒すために、怪異を怪異でなくするために理屈・屁理屈をこねまわす小説だ。なので「鋼人七瀬」の正体に関する推理が二転三転としていく。そこが本作品の肝だ。

2016-6-5
この本も買ったのは半年ぐらい前で、ようやく時間がとれて読むことができた。
どこでこの本を目にしたのか記憶が定かでないが、タイトルに惹かれて購入した。「虚構の推理とはなんなのだろう」と。あと、作者が雨月物語に着想を得たいうようなことを書いていたので、その所にも興味があった。ただ、雨月門語りは未読なので、どの部分が相当するのかはよくわかっていない。ミステリーに雨月物語の要素が加わるとどうなるのだろうと思っていたが、多分ストーリーに直接雨月物語とは関係ないのだと思う。それと、この話自体純粋なミステリーとも違うようだし。怪異を鎮めるために、虚構の推理を構築し、怪異を怪異ではなくするストーリだ。
ただ、鋼人七瀬の話は完結しているが、琴子・九郎と六花の話はまだ完結していない。