隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

修道女フィデルマの探求

ピーター・トレメインの修道女フィデルマの探求を読んだ。

本書はの主人公のフィデルマは修道女であり、アイルランド5王国のひとつモアン国の王位継承予定者の妹であり、法廷弁護士(ドーリィー)でもある。しかも、場合によっては裁判官として判決を下すこともできる上位弁護士(アンルー)の資格もつというユニークな探偵役が主人公の短編ミステリーシリーズの一冊である。本書のあとがきを読んで、オリジナルの英語版の短編集Hemlock at Vespersを3冊に分けて出版されたという経緯を初めて知った。道理で原初のタイトルが見つからないわけだ。

本書には5編おさめられており、「ゲルトルーディスの聖なる血」、「汚れた後輪」、「不吉な僧院」、「道に惑いて」、「ウルフタンへの頌歌」が収められている。あれっと思ったのは、「不吉な僧院」、「道に惑いて」の二編。理詰めで謎を解いていくのではなく、犯人に鎌をかけているのだ。特に後者の方は、全く犯人を特定するための証拠がつかめていない感じがして、ちょっとミステリーとしてはどうなのだろうと思った。それと、最初の2編で触れられているが、当時のアイルランドの修道士・修道女には独身性というのは必須の条件ではなかったようで、結婚することもできたようで、意外だった。