隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

サー・ガウェインと緑の騎士 トールキンのアーサー王物語

J・R・R・トールキンのサー・ガウェインと緑の騎士(原題 SIR GAWAIN AND THE GREEN KNIGHT)を読んだ。副題に「トールキンアーサー王物語」とついているが、アーサー王物語なのは「サー・ガウェインと緑の騎士」だけで、その他の「真珠」、「サー・オルフェオ」、「ガウェインの別れの歌」はアーサー王物語ではない。トールキンアーサー王物語を書いていたということに興味を持ったのだが、実際には14世紀ごろの作者不詳の中世英語で書かれた物語をトールキンが現代語に訳したものだった。全くのトールキンの創作ではなかった。

「サー・ガウェインと緑の騎士」と「サー・オルフェオ」は物語らしい体裁をとっている。「サー・ガウェインと緑の騎士」はクリスマスにアーサー王の館に緑色の大男の騎士が現れ、戦斧で打ち合いをしようと申し出る。その勝負を受けたのがアーサー王の甥のガウェインで、ガウェインは戦斧で緑の騎士の首をはねたのだが、騎士は倒れるどころか、自分の首を拾って、ガウェインに向かって、約束通り一年後に訪ねてきて、一撃を受けろと言って去っていった。ガウェインは一年後約束を果たすために、緑の騎士を探す旅に出たのだった。

「サー・オルフェオ」は何者かに王妃をさらわれた国王オルフェオの数奇な物語だ。王妃を失った国王オルフェオは世捨て人となり、放浪の旅に出て、あてどなく放浪していたが、偶然ある国にいた王妃を見つけ連れ帰るという話だ。

「真珠」は散文詩的で、よくわからないストーリだった。失われた真珠を発見すると美しい乙女の姿をしているのだが、キリストの花嫁になっていて、神の国にいる。この真珠が何かを暗示しているような気がするのだが、なんだかよくわからず、それとキリスト教がどう関係しているのかもよくわからなかった。当時のイギリス・ヨーロッパの知識がないからよくわからないのだ。

訳者のあとがきを見ると、トールキンは原文のリズムを生かすために、翻訳の時に多少選択する単語を変えているようで、そのために細かいニュアンスが本来の物語と違っているということだ。そう意味では本書に収められている物語はトールキンによる翻案物なのかもしれない。