隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

図書室のバシラドール

竹内真氏の図書室のバシラドールを読んだ。直原高校の図書室で司書をすることになった高良詩織の「図書室のxx」シリーズの3作目。1作目、2作目を読んだのは2年半も前で、まさか、3作目が出るとは思っていなかった。

このシリーズは高校の司書を務める高良詩織の周りで起こるちょっとした謎を解く日常のミステリーだったが、3作目はミステリー成分はあまりなかった。本書には3作の短編が収められていて、かろうじて「夏休みのバシラドール」がミステリー的だったが、後の「文化祭のビブリオバトル」と「来年度のマジックシード」はどちらかというと高校の司書を取り巻く成長物語というような感じだった。というのも、本書では高良詩織は通信制の大学に通っていて、司書の資格を取ろうと頑張っているというのが、3編通じての共通のストーリーになっているからだ。しかも、3編目の「来年度のマジックシード」では生徒間のもめ事を、教師と図書室の司書が連携・協働して解決するというちょっと理想的すぎる展開にもなっている。

詩織の高校司書としての契約が毎回1年で、契約が更新されるのだろうかという不安定な身分の話もストーリーに絡めてきているが、今回は司書の資格を取得したことで未来への展望が開けそうな終わり方になっているので、もしかするとこのシリーズはまだ続くのかもしれない。

この本の中には多数の方が紹介されているが、今回かなり興味をひかれたのは「シュリーマン 黄金と偽りのトロイ」という本だ。あのシュリーマンの伝説である「少年の頃、トロイ戦争を歴史的事実だと思い、その遺跡を発見することを夢見て」という話は、どうやら作り話のようなのだ。これは全く知らなかったので、ぜひともこの本を読みたくなった。