隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

戯作屋伴内捕物ばなし

稲葉一広氏の戯作屋伴内捕物ばなしを読んだ。本書は時代小説とミステリーを融合したハヤカワ時代ミステリ文庫でハヤカワ文庫JAの中のサブカテゴリなのだと思う。2019年の夏から刊行を開始しているようだ。本書の主人公は戯作者(本人は戯作屋と称しているが)の広塚伴内で、売れない戯作者で、戯作だけでは食べていけないので、瓦版の文案を書くアルバイトをして糊口をしのいでいる。伴内にの所には幽霊・化け物・祟りにまつわる摩訶不思議な事件が持ち込まれて、それを解決することで礼金をせしめることもやりつつ、瓦版の文案をひねり出しているのだ。本書は短編集で、「鎌鼬の涙」、「猫又の邪眼」、「産女の落とし文」、「縊れ鬼の館」、「土蜘蛛の呪い」、「葛ノ葉狐の文箱」の6編が収録されている。

ミステリーとしてはあまりひねっていなく、伴内が「正体見たり枯れ尾花」と言う辺りまでの内容で、だいたいストーリーの流れが見えてくるようになっている。「実際にどうやって」というトリックの辺りが作品の肝なのかと思う。読んだ印象だと、テレビの捕り物時代劇風な印象を受けたのだが、作者が映画とかドラマの脚本を手掛けていたから、そういう雰囲気のストーリー展開になっているのではなかろうか。