隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

第八の探偵

アレックス・パヴェージの第八の探偵(原題 Eight Detectives)を読んだ。原題の意味するところは八人の探偵なのに日本語のタイトルが第八の探偵になっているのは、アメリカ版のタイトルが"The Eighth Detective"になっているのに倣っためなのだろうか。

この小説の構成はトリッキーになっている。グラント・マカリスターという数学者がかって(1940年代に)出版した「ホワイトの殺人事件集」というミステリーを掘り起こした出版社の編集者であるジュリア・ハートが、今は地中海の小島に隠遁生活をしている当のグラントの許を訪れ、この本を復刊するためにグラントと対話するというのが大枠の構成だ。そして、奇数の章に「ホワイトの殺人事件集」の中から作品を収録し、偶数の章でジュリアとグランとの対話の場面が描かれているのだ。これだけだとそれほど複雑ではないのだが、色々な意味で仕掛けが施されていてる。そもそも、なぜグラントの書いた小説が「ホワイトの殺人事件集」というタイトルになっているのかも不思議な点だ。ホワイトとは何者なのか?例によってネタバレになるので、詳細は書けないが、この小説の面白いところは、7編の作中作とその後のジュリアとグランとの対話が終わった後の、「最後の対話」の章からだ。ここでもう一人探偵が登場して物語に仕掛けられていたトリックを明らかにしていくのだ。だから、タイトルが第八の探偵になっているのだろう。そして、収録されている作中作にも仕掛けが施されていることが明かされる。結構凝った作りのミステリーになっている。