アインシュタインとフロイトの往復書簡 ヒトはなぜ戦争をするのか?を読んだ。
講談社のサイトにこの本の紹介があって、興味を持ったので読んでみた。
この二人が書簡を交換し、究極的な「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」への回答が得られているのなら、その後の戦争を回避し、我々は平和に暮らしていただろう。しかし、そうはなっていないので、人間を戦争から解放する方法は二人の間では見つからなかったという事は明白で、それはこの本を読む前からわかっていた。何の驚きもない。むしろ、この書簡の注目すべき点は、解説で養老先生が指摘しているが、時代性だろう。我々はその後何が起きたのか知っているので、そのことを踏まえてアインシュタインの身に何が起きどう行動したのかを見ると、何とも言えない気持ちになる。
- 1932年
- 「ヒトはなぜ戦争をするのか?」の書簡を送る
- 1933年
- ナチスが権力を握る。ナチスからの暗殺を脅威に感じ、アインシュタインはアメリカに亡命する
- 1939年
- アインシュタインは新型爆弾の開発を促す手紙をアメリカ大統領のルーズベルトに送る
- 1945年
- アインシュタインは広島・長崎の惨状を知り、ルーズベルトへの手紙を後悔する
- 1946年
- アインシュタインは核兵器反対の言動を繰り返し、共産党の手先というレッテルを張られる
アインシュタインといえども1930年代はナチスへの憎しみが非常に大きかったのだろうと想像される。そのため核兵器開発を後押し、その悲劇性を知って後悔する辺りはあまりにも人間的だ。その後、時の政府の望まない発言をすることで、共産党の手先というプロパガンダに巻き込まれてしまうのだ。今は言論の自由を守っているイメージがあるアメリカ合衆国も冷戦下では赤狩りという反政府的な言論を取り締まるキャンペーンを行っていたことを忘れてはいけない。