隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

七つの裏切り

ポール・ケインの七つの裏切り (原題 SEVEN SLAYERS)を読んだ。確か朝日新聞の書評で紹介されていて興味を持ったのが読もうと思ったきっかけだったと思う。

驚かされる知略に満ちた「11文字の檻 青崎有吾短編集成」など村上貴史が薦める新刊文庫3点|好書好日

また、amazonのあらすじ紹介には、

町なかで別人と間違われて呼び止められた男。そのまま倒れこんでしまった相手を助けてタクシーに乗せたものの、彼はすでに絶命していた。こうして町の裏世界に関わることになった男は、驚くべき行動に出る……

とかかれて、どんなストーリーなのだろうと興味を持って読んでみた。読んだ感想としては、これはかなり難易度が高い短編集だというものだ。朝日新聞に書かれているように、本当に極限まで無駄をそぎ落とした文章になっていて、物語の語り手の立ち位置すら書かれていないのだ。だからamazonのあらすじに載っていた最初の短編「名前はブラック」では、この語り手が探偵なのか、ギャングなのか、何らかのトラブルを解決するためにこの街にやって来たのかなかなか明らかにならない。にもかかわらず物語はずんずん進んでいってしまう。この男は対立する二つの組織の間で何やらきな臭いことを始めるのだが、その行動は黒澤映画の用心棒の筋書きを思い起こさせた。

他の収録作品は「”71”クラブ」、「パーラー・トリック」、「ワン、ツー、スリー」、「青の殺人」、「鳩の血」、「パイナップルが爆発」の全部で7編。あまりハードボイルドは読まないので、どれくらい「ウルトラ・ハードボイルド」なのかよくわからないが、最初に書いた通り、あまりにも簡潔過ぎて、集中して読み進めないと、読み落としてしまって、状況を見失ってしまうそんな作品群だった。