隠居日録

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2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき

毛内拡氏の脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらきを読んだ。脳というとニューロンシナプスが重要な組織であると思っていたが、近年の調査研究でそれ以外の組織も脳の機能に重要な役割を果たしていることがわかってきたようだ。

細胞外スペース

脳はニューロンがびっしり詰まった状態になっているわけではなく、「すきま」があるというのだ。この隙間のことを細胞外スペースと呼んでいる。そして、この細胞外スペースは間質液と呼ばれる無色透明の液体で満たされている。脳の細胞外スペースは脳の体積の15%から30%と言われている。脳の細胞外スペースの体積は一定ではなく、脳の状態やライフステージにより伸び縮みしている。睡眠時や麻酔時は23%程度で、覚醒時は14%程度まで減少する。若いときは40%ぐらいが細胞外スペースで、老齢期は13%~16%程度になっているようだ。

細胞外スペースの役割は緩衝材と脳に物質を運んだり、排出したりする2つが考えられる。ノルアドレナリンセロトニンドーパミンアセチルコリンなどが細胞外スペース中に拡散し、脳の広範囲の活動を調整していると考えられている。ノルアドレナリンは脳の覚醒水準を高めて、注意を集中し、また新しい環境に置かれたときに生じる不安やストレスを軽減する。セロトニンは本能的な行動を制御しており、具体的には血圧調整、体温調整、摂食行動、性行動、睡眠覚醒のサイクル、概日リズム、攻撃性や不安などの情動行動を制御している。ドーパミンは快不快、嫌悪、恐怖、喜怒哀楽などの感情に関係する情動や報酬行動、自分の意思で体を動かす随意運動を制御している。アセチルコリンは脳では大脳皮質や海馬の情報伝達に関与しているという報告があり、このことから学習や記憶に重要な働きをしていると考えられている。

グリア細胞

脳細胞にはニューロン以外にグリア細胞があり、それはニューロンと同じくらいかそれ以上の数があることがわかっている。グリア細胞はアストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアに分類される。アストロサイトは脳内環境を整備している。オリゴデンドロサイトは髄鞘(エミリン鞘)を形成し、ニューロンの軸索に巻き付き跳躍伝道(伝道速度を飛躍的に向上させる仕組み)と実現している。ミクログリアは脳内の免疫を担当している。

アストロサイトは様々な機能を果たしている。アストロサイトは血液からグルコースを取り込んで貯蔵しておき、ニューロンが必要な時にニューロンが使える形にしてエネルギー物質を与えている。ニューロンが活動すると細胞外のカリウムイオンの濃度が高まるので、アストロサイトはカリウムイオンを取り込んで、細胞外のカリウムイオンの濃度を下げる。ニューロンシナプス伝達するために、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸を放出するが、放出されたグルタミン酸はアストロサイトが回収し、ニューロンが利用できるように変換している。