隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

図説 中世ヨーロッパの商人

菊池雄太(編著)氏の図説 中世ヨーロッパの商人を読んだ。以前会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 - 隠居日録を読んだ。この本は会計の歴史ではあるが、ある種経済史でもあり、ヨーロッパの商人の歴史をルネッサンス以降の時代から語っている。ではその前はどうなっているのだろうかという事で、本書を手に取ってみた。中世は約1000年間もあるので、なかなか一口には語れないと思うし、本書が100ページちょっとしかないので、ちょっと説明が少ないと感じた。

ヴァイキングの時代

中世初期の商人はヴァイキングが担っていたという最近では割と有名な話から始まっている。ヴァイキングの活動範囲はスカンジナビア半島を中心にバルト海バレンツ海北ヨーロッパ辺りが主なのだろうと思っていたが、実は地中海、黒海カスピ海と割と広範囲にネットワークを構築していた。今のスウェーデンに居住していたヴァイキングは東へ、ノルウェーヴァイキングは西へ、デンマークヴァイキングは南へと広がり、紀元1000年ごろまでには北大西洋からユーラシア西部までの各地に定住していた。そして、新たな定住地と祖国の間を常時移動して、各海域・河川・湖沼をつなぐ水系ルートを把握し、スカンジナビアの内外の要所に交易所を設置した。

本書に八世紀から十世紀の初頭にはイスラム世界から何十万というディルハム銀貨が流入していたと書かれていて、その前の時代は金が貨幣として用いられていた。多分これ以降ヨーロッパの主要な通貨は銀に移行していくと思うのだが、結局19世紀以降また金に戻っていったのは金と銀の供給量の関係が影響しているのだろうか?本書にはその辺りのことが書かれていないのでよくわからないが、気になるところではある。

ギルド・ハンザ

カロリング朝の頃は、王による商人の保護は、個別に行われていたが、10世紀頃になると商人の団体に対して特権が与えられた。市場集落や遠隔地交易定住地に商人が結集し、やがてまとまりを持った団体が形成されて行った。それらの団体が特権を与えられるようになった。このような団体を商人ギルドと呼ぶ。ギルドと同種の概念の言葉として「ハンザ」があるが、この言葉はもともと「群れ」を意味し、「交易を営む権利」という意味が結びつけられた。ハンザ商人は各地に商館を設立し、ノヴゴロド(現在のロシア北西部)、ロンドン、ブルッヘ(ブルージュ、現在のベルギー北西部)、ベルゲン(現在のノルウェー西岸)が4大商館だった。