隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

素敵な圧迫

呉勝浩氏の素敵な圧迫を読んだ。この本は短編集で、「素敵な圧迫」、「ミリオンダラー・レイン」、「論リー・チャップリン」、「パノラマ・マシン」、「ダニエル・《ハングマン》・ジャービスの処刑について」、「Vに奉げる行進」の6編が収められている。

全体的に不思議なテイストの小説が多くて、ミステリーの短編集ではない。「素敵な圧迫」と「パノラマ・マシン」が面白かった。「素敵な圧迫」は子どもの頃から狭いところが好きな蝶野広美の物語で、最初は押入れの隙間だったが、やがて体が入らなくなった。それから悶々と圧迫される想像をめぐらして、やがて大人になり、電源を抜いた冷蔵庫に行き着く。だが、男に抱きしめられる快感を発見して、その男にのめり込むのだが、やがて、肉体的な圧迫だけではなく、精神的な圧迫もアリだというところまで行き着く話。「パノラマ・マシン」はこの世界と全く同じ仮想の世界を作り出す不思議な黒い箱を拾ったDとFの物語。箱を見つけて、拾ったのはFだが、そこに強制的に割り込んだのがDで、共有することになった。仮想な世界でやりたい放題をするFとDが辿り着く狂気の結末。