隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

あなたに聞いて貰いたい七つの殺人

信国遥氏のあなたに聞いて貰いたい七つの殺人を読んだ。本書は殺人鬼対探偵という形式のミステリーになっているが、一捻りされている。殺人鬼はヴェノムと名乗りラジオマーダーをネット配信し、その中で誰かを殺しているのだ。しかも7人殺して、7回ラジオを配信すると宣言している。ヴェノムの音声は加工しているので誰かは全く不明だ。また、被害者はさるぐつわでもかませられているのか、声にならない声や叫びがラジオに流される。このヴェノムを見付けて欲しいと探偵の鶴舞尚に依頼してきたのが桜通来良というフリージャーナリストだ。鶴舞は銀行を辞めて、探偵事務所を開いたが、ほぼ開店休業状態で、金に不自由していたので、依頼を受けない手はなかった。

桜通が鶴舞に依頼してきたのは、同じ大学の出身で、ゼミも同じで、教授の還暦を祝うパーティで見かけた印象的な出来事が理由のようだが、この後桜通のペースにどんどん乗せられていくような感じがした。彼らに対抗してディテクテブラジオを始めたり、幸か不幸か、被害者を発見したり、連続殺人の共通点のようなものも見つけたりして、殺人鬼に迫っていく。

物語は鶴舞・桜通が殺人鬼を推理する場面と警察がこの事件を捜査する場面とで進んでいくのだが、第三章の最後で急展開する。このミステリーの謎はヴェノムが何者で、なぜこんなことをしてるのか。それと桜通の真の目的とは何か(彼女自身が殺人を犯しているわけではない)なのだが、確かに意外な理由だった。「七罪村の殺人」なる文書をネットで桜通が見つけてきたところは、「?」という感じがして、彼女もこの事件に関係しているけれど、どう関係しているかわからなかったが、最後まで読んでそういう事かと納得した。納得したけれど、動機はちょっとぶっ飛んでいるなとは思う。