隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

先生、それって「量子」の仕業ですか?

大関真之氏の「先生、それって「量子」の仕業ですか?」を読んだ。

量子力学に興味があるが、難しい本を読んでも理解が追い付かないと思い、初心者向けの本を選んだのだが、あまりにも初心者向けで、あまり得るところがなかった。本の選択はなかなか難しい。

興味深かったのは、動物が酸素を細胞に取り込んで過程で、酸素中の電子が高速に移動しているのだが、その酸素の移動に量子的なふるまいが観測されているという。また、光合成の過程においても量子力学的なふるまいが仮定されているらしい。

この本では量子の振る舞いを忍者になぞらえて表現しているのだが、最後まで「あらゆる可能性を探索する忍者の能力」が具体的に何をあらわしているのかピンと来なかった。

半席

本書には「半席」、「真桑瓜」、「六代目中村正蔵」、「蓼を喰う」、「見抜く者」、「役替え」の六編が収められている。実は表題作の半席は約定 - 隠居日録にも収められており、どういうことだろうと思っていたのだが、実は本作はその登場人物の片岡直人を主人公にした連作短編小説となっているのだ。

片岡直人は半席の侍で、徒目付をしている。本人としては一刻も早く勘定奉行所に役替えして、半席の状況を脱したいと思っている。しかし、組頭の内藤雅之がどこからか頼まれた御用頼みを片岡直人に回してくるので、その仕事もしなければならない。そこでは何らかの事件が起きて、犯人は捕まっており、自白もしている。しかし、なぜそのようなことをしたのか理由が明らかになっていない。その理由を明らかにしてほしいというのだ。片岡直人は関係者に話を聞いて、何があったかを推理し、そしてその理由を犯人から引き出すことになる。そいう筋立てになっているので、これは一種のミステリーでもある。

二話目の真桑瓜から四話目の蓼を食うに、沢田源内という浪人が登場するのだが、直人はその源内と話す事により推理の糸口を見つける趣向になっている。また、最終話は役替えという題名になっており、直人が勘定方に役替えになるのかと期待させるタイトルになっているが、役替えの話は最後の最後まで出てこないようになっている。