なぜこの本を読もうと思ったのか正確には思い出せないが、NHK FMの青春アドベンチャーの「know ~知っている」を聞いて、作者に興味を持ったからだと思う。それで、野崎まど氏のデビュー作の「[映]アムリタ」を読んでみた。
映画製作にまつわる話だが、撮影している映画「月の海」に関しては、恋愛映画であるということが示唆されているだけで、その内容に関しては具体的には触れられていない。実際には内容自体もさほど意味がないことが、主人公により暴かれる。ただ、コンテを見たものが長時間にわたり見ることを強制される、見続けなくてはならなくなる不思議な作品。この映画のタイトルと、本のタイトルが一致せず、どこかで映画「アムリタ」が出てくるのかと思ったら、実はこの「月の海」の別な編集をしたのが映画「アムリタ」ではないかと、主人公が思い至るのだが、それすら最後には真実だったかどうかがあやふやになってしまう。