隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ホワイトラビット

伊坂幸太郎氏のホワイトラビットを読んだ。なぜこの本のタイトルがホワイトラビットかというと、この小説がいわゆる白兎事件を扱っているからだ。白兎事件は本書の中で起きる事件であるので、もちろん架空の事件だ。

兎田孝則という名前の男がいた。褒められたことでは全くないが、兎田はある犯罪組織に属していた。誘拐をする組織だ。彼らの変わっているところは、金銭として身代金を取らないところで、その代わりに何かをさせるのだ。例えば、大量の株を買わせる、法案を通させる、法律違反をさせる、手術をさせる、手術をさせない、事故を起こさせる、物を盗ませる、等々。そうすることにより、回りまわって、彼らに利益がもたらされる様にしているのだ。ところがこともあろうか、その兎田孝則の新妻綿子が誘拐されてしまった。要求は、折尾を探して連れて来いというものだ。折尾というのはコンサルタントで、兎田の属する組織(実は会社組織のようになっているのだが)の経理の女をだまして、金を持ち出させて、行方をくらました。そう、兎田の新妻を誘拐したのは、兎田の会社の社長稲葉だ。そして、折尾が仙台周辺にいることがわかり、兎田は新妻を取り返すために、追跡するうちに、折尾がいると目星をつけた家に押し入った。そう、白兎事件とは、仙台で起きた、人質立てこもり事件なのだ。

本作は少しづつ、何が起きているのかが明らかにされていくのだが、時間が進んだり、戻ったり、こちらの場面を描写したかと思えば、別な視点から物語が語られて、一筋縄ではいかない。一種の倒叙物になっており、物語の半ばに来てようやく、作者による種明かしがされ、何が起きていたのかが読者の前に姿を現す仕掛けになっている。しかし、最後の最後まで、物語がどう転がるかが見えない、表示巧みなストーリーとなっている。