隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

命の砦

五十嵐貴久氏の命の砦を読んだ。本書は北上ラジオの24回で紹介されていた。

五十嵐貴久『命の砦』(祥伝社)は、超興奮の極みで息つく暇のないパニック小説だ!【おすすめ本/北上ラジオ#24】 - YouTube

この本も実は「女性消防士・神谷夏美シリーズ」の三冊目で、北上ラジオではシリーズ物の一冊を割と頻繁に紹介しているような気がする。前に2作を読まなくても、本書を理解するうえで問題はないのだが、登場人物の関係がすでに出来上がっており、この中で前に起こった事件に関して頻繁に言及されているので、一冊目の「炎の塔」は先に読んだ後の方がいいような印象を受けた。

後書きによると「組織その他すべて架空のものです」と書かれているので、東京都に実際に銀座第一消防署という組織があるのかどうかわからないが、主にそこに所属する消防士の物語だ。本の帯にも書かれているが、火災の発生場所は新宿で、しかもあの広大な新宿地下が火災に見舞われるというパニック小説だ。本書も内容を詳しく紹介するとネタバラしになってしまうのだが、悪意を持った人間により新宿地下がクリスマスイブにテロに合い、しかもそこにとんでもないものがあったことで、大規模火災が誘発されるかもしれないという状況が発生する。それをどう未然に防ぐのかというのが一つの物語の軸で、もう一つはなぜそんな事件が起きたのかというのがもう一つの軸だ(こちらは、展開が早すぎのような気がするのと、なぜ犯人の行動が読めるのかがちょっと不思議な感じがした)。過酷な火災事故現場で、体を張った消防士の物語で、タイトルのように自らを「命の砦」として新宿を東京を守る物語だ。物語としては大災害を未然に防ぐのだろうと予想しつつも、時間が刻一刻と迫る状況も進行し、一難去ってまた一難の展開は最後まで飽きさせない。