隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

蝶として死す

羽生飛鳥氏の蝶として死す 平家物語推理抄を読んだ。時代は平安末期の頃で、いわゆる平家が台頭し滅んでいく頃である。池殿流平家の頼盛を主人公にして、頼盛に降りかかってくる難題を何とか知恵でかわしていくというミステリーが本書の概略だ。頼盛は清盛の異母弟だ。本書には「禿髪殺し」、「葵の前哀れ」、「屍実盛」、「弔千手」、「六代秘話」の5編が収められている。

頼朝の助命をした池禅尼の存在は当然知っていたが、その子の一人が頼盛で、歴史的にも異母兄の清盛及びその係累から色々難題を吹っ掛けられているようで、その生涯でたびたび官職を解任されているが、不死鳥のようによみがえってくるその生きざまは実に興味深い。この小説では実際の出来事をもとにして、架空の事件を構築し、頼盛が謎を解いたり、窮地を切り抜けるというようなストーリーが展開していて、虚実織り交ぜたところに作者の巧みさがあり、面白いミステリーとなっている。本書を読んで、実は平頼盛自体に興味が湧いてきていて、実際の彼の生涯を調べてみたくなった。