本の雑誌で北上次郎氏が「彼女。」の中の「恋澤姉妹」に注目していたので、読んでみた。
本書はアンソロジーで、収録されている作品は
- 椿と悠 (織守きょうや)
- 恋澤姉妹 (青崎有吾)
- 馬鹿者の恋 (武田綾乃)
- 上手くなるまで待って (円居挽)
- 百合である値打ちもない (斜線堂有紀)
- 九百十七円は高すぎる (乾くるみ)
- 微笑の対価 (相沢沙呼)
確かにこの作品群の中では「恋澤姉妹」異色だ。百合小説と言えばそうなのだが、バトルアクションもの形をとっている。恋澤姉妹の姉の名前が吐息なのはまだしも、妹の名前が血潮というのは何とも物騒だ。この姉妹はやたら強い。かかわってくるものを片っ端から殺していく。こんなストーリーなのに百合ってどうなるのかと思うと、最後の方では百合ぽくなっていた。「椿と悠」はプラトニックな感じだが、実は「恋澤姉妹」もプラトニックだ。「九百十七円は高すぎる」はこの言葉が何を意味しているのかを推理する日常のミステリー風の短編になっている。「上手くなるまで待って」も日常のミステリー風だけれど、実際はミステリーには主眼がないと思う。「微笑の対価」がこの中では一番ダークな感じのストーリーだった。ミステリーを主に書いている著者だから、最後で色々な謎が明らかになるのかと思ったら、そうではないので、これもミステリー風な小説だろう。
確かにこの作品群では「恋澤姉妹」が異色なのは間違いない。そして最強だ。