隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

方舟

夕木春央氏の方舟を読んだ。大学時代の友人の裕哉の誘いに応じて彼のおじさんの所有する長野県の別荘に集まった友人たち。彼らは裕哉が発見した山奥にあるという地下建築物を見に出かけたのだが、途中道に迷ってしまって、その場所についた時にはもう夕方になっていた。その地下建築物は地面の下にあり、マンホールのような入り口を通って、中に降りていった。その建築物は地下一階、地下二階、地下三階とかなりの広さがあったが、地下三階部分は水没していて、立ち入りができなかった。地下一階、地下二階とも20部屋近くある。今日はもう遅いから、この建物に泊まることにしていると、後から親子づれ3人が合流し、総勢10人になった。親子づれは山にキノコ狩りにきて道に迷ったらしい。

そして、そこに止まった日の明け方に地震があり、地下一階と外に繋がっている通路の鉄扉が大きな岩によって開かなくなってしまった。地下二階から状況を確認すると、岩は機械を使って地下二階に引き落とせそうだが、そうすると機械を操作したものが外に出られなくなってしまう。取りあえず、岩を引き落とす作業をするための工具を探しているうちに、裕哉の姿が見えなくなり、後で扼殺死体が発見された。この鎖された状況で殺されたのだ。そして、地下三階の水の水位が上がってきていることが発見される。

外に出るためには誰かが犠牲になり機械を操作して岩を動かさなければならない。下からは水が流入していて、1週間ぐらいしか時間がなさそうだ。絶体絶命の状況で、更なる殺人が起きていく。こんな感じのミステリーなのだが、彼らは裕哉を殺した人物に機械を操作させて脱出しようと考えているのだが、物的証拠も乏しいし、彼らに殺人捜査できるはずもない。犯人はなかなか明らかにならないのは当然の展開で、そのままだと間延びした展開にもなるのだが、第二の事件が起きる。仮に犯人が分かったとして、その犯人が大人しく機械を操作するのかという疑問もあったが、こういうオチになるとは予想できなかった。ネタバレになるので詳細は書けないが、最初から作者にうまく嵌められたというのが読後の感想。よくできたミステリーだ。