隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

11文字の檻

青崎有吾氏の11文字の檻を読んだ。この本は色々なところで発表された短編やショート・ショートを収録した短編集で、「加速していく」、「噤ヶ森の硝子屋敷」、「前髪は空を向いている」、「your name」、「飽くまで」、「クレープまでは終わらせない」、「恋澤姉妹」、「11文字の檻」の8編が収録されている。

「加速していく」は福知山線脱線事故を舞台に不可解な行動をしていた男子高校生の謎の日常のミステリー。「噤ヶ森の硝子屋敷」は外壁、内壁、扉、天井、屋根、階段と最小限の柱を除いた部材がガラス(あるいはアクリル)で作られて屋敷で起きた密室殺人の謎。これ読んでいてよくわからなかったのは、天井も床も透明と書かれているのだが、寝室の扉が透明かどうかはっきりわからなかったところ。ヴィデオカメラで扉を撮影していたことになっているので、透明ではないように思えるのだが、よくわからなかった。「前髪は空を向いている」はなんだかよくわからない女子高生のストーリーで、著者解説を見ると「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」の2次創作なんだとか。元を知らないからなんだか全然わからなかった。「your name」と「飽くまで」は本当に短いショート・ショートでミステリ的な話。「クレープまでは終わらせない」も著者解説を見ないとなんだかよくわからないストーリー。女子高生がアルバイトで外蟲という宇宙から来た侵略生物と戦う決戦兵器の清掃をする話。「恋澤姉妹」は別のアンソロジーで読んでいたので、今回はスキップした。「11文字の檻」は、東土政府に恒久的な利益をもたらす11文字を当てたら、敵性思想を持っているとして収容されている更生施設から解放されるというルールがある施設からどうやって回答をひねり出して、抜け出すかという話。

面白かったのは「加速していく」。「噤ヶ森の硝子屋敷」は密室事件なので、「元々密室ではない」か「偶然密室になった」のどちらかがまっとうな答えで、今回は建物の特殊性が現れているので、最後にニヤリとした。「11文字の檻」は「部屋毎に含めるキーワードがある」というのを東土政府からの縛りだと勘違いして読んでしまった(それは自分の不注意なのだが)ので、物語のオチが「あれ?」となってしまった。