隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ライオンの歌が聞こえる 平塚おんな探偵の事件簿2

東川篤哉氏のライオンの歌が聞こえるを読んだ。本書は平塚おんな探偵の事件簿シリーズの第二弾。前回と同様に探偵のエルザと助手の美伽のコンビが事件を解決していく。

今回も短編集で4作収録されている。この回の各話のタイトルはそのものズバリ物語を言い表している。

亀とライオン
亀の愛好家武田幸彦がカミツキガメのミツキちゃんがいなくなったので捜索してほしいと依頼をしてきた。一週間捜して見つからなかったところ、武田から相模川でミツキちゃんを見たという連絡を受けたという報告が入った。エルザと美伽も相模川に駆け付けると、武田は殺されていたのだった。だがなぜか靴と靴下をはいていなかった。
轢き逃げは珈琲の香り
競輪場で知り合ったおばあさんがひき逃げ事件に巻き込まれた。幸い命に別条はなかったが、なぜかおばあさんにはコーヒーが匂いが漂っている。
首吊り死体と南京錠の謎
内側から南京錠でロックされている登山部の部室で女子学生が首吊り自殺をしているのが発見された。どうやら首吊り自殺したのは松原美咲のようで、10日前に湘南平の展望台の金網から南京錠を回収したのはエルザだったのだ。
消えたフィアットを捜して
高校時代の後輩からの依頼は奇妙なものだった。夜中にランドクルーザーで砂浜を失踪中にフィアットと衝突したようなのだが、なぜかその事故の跡形が何もないというのだ。

この中では第二話の「轢き逃げは珈琲の香り」が面白かった。なぜコーヒーがかかっていたのかというところを糸口にして推理を進め、うまく話をまとめていると思った。

ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1

東川篤哉氏のライオンの棲む街(平塚おんな探偵の事件簿シリーズ)を読んだ。

生野エルザと川島美伽の探偵コンビのシリーズの第一弾。川島美伽は東京でOLをしていたのだが、仕事に疲れ、恋に破れ、貯金を持っていかれた挙句、なぜか不況下に会社を退職した27歳女子。人生を立て直すためにいったん地元の平塚に戻った所に、高校時代の友達の生野エルザからFAXが届いた。曰く、「暇ならウチの仕事を手伝え。とにかく一ぺん顔見せろ」と。訪ねていくと、そこにあったのは、「生野エルザ探偵事務所」だった

本書は短編集で5編収録されており、

女探偵は眠らない
浮気調査のために見張っていた部屋で調査対象の男が殺された。出入したのは、花柄のワンピースの女だけ。この女が一番怪しいのだが、いったい誰なのか?
彼女の爪痕バラード
山脇敏夫から失踪した恋人の優菜を探してほしいという依頼を受けたのだが、その山脇敏夫が殺されてしまった。前日山脇敏夫は優菜の実家を訪ね、何かの証拠を見つけたようなのだが、……。
ひらつか七夕まつり
悠木茜からルームメートの本山志穂が悠木茜の恋人を取っている疑いがあるので見張ってほしいという依頼を受けた。それで、ひらつか七夕まつりの日に本山志穂の鼓動を監視した。一方女子大の講師の松村栄作が殺された。だが、重要参考人の本山志穂にはエルザと美伽が監視していたせいでアリバイができてしまっていた。
不在証明(アリバイ)は鏡の中
柳田美紗からの依頼は占い師に洗脳されている姉を助けてほしいというものだったのだが、その姉が殺人事件の犯人に仕立て上げられてしまって、……。
女探偵の密室と友情
日高静江からの依頼は夫の玄蔵が誰に殺されたのか調べてほしいというものだった。だが、状況は玄蔵は密室で死んでいた。だが、タオルで首を絞めていたという不思議な状況でもある。

のそれぞれ。この作品は探偵のエルザと助手の美伽のコンビが非常に面白く作られていて、読んでいて楽しい。タイトルにある「ライオン」は生野エルザから来ており、「野生のエルザ」をもじってライオンになった。彼女は誰にでも噛みつく気性のヤンキー的なキャラクターになっているが、ストーリーの中では謎を解く探偵役。といっても、理詰めでなぞをとくよりは、まず行動でというタイプ。一方美伽は高校時代は美人で有名だったが(本人談)、いまは地味なアラサーという設定で、往々にして名前を覚えてもらえない設定になっている。彼女は探偵助手で、本作の語り手になっている。このシリーズは今の所3冊出ているので、順次読んでいこうと思う。