隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ライオンは仔猫に夢中 ~平塚おんな探偵の事件簿3~

東川篤哉氏のライオンは仔猫に夢中を読んだ。本書は平塚おんな探偵の事件簿シリーズの第三弾。前回と同様に探偵のエルザと助手の美伽のコンビが事件を解決していく。

今回も短編集で4作収録されている。最後の「あの夏の面影」は書き下ろし作品。

失われた靴を求めて
小松精機代表取締役の小松雄二の依頼は娘の静香の自殺の再調査だった。静香は勤め先の資材部の部長と付き合っていたのだが、最近別れて、落ち込んでいたというのだ。早速二人は調査を開始したいところだが、車が修理中で動きがとれない。それで小松雄二は部下の守屋を運転手として使ってくれと提案した。調査を進めていくと不思議なことに気付いた。父親の小松雄二が娘の静香にプレゼントしたブランド物の赤いハイヒールが亡くなっているのだ。
密室から逃げてきた男
スナック「紅」のママの遠縁にあたる大学生の松崎英二は目覚めると見知らぬワンルームの一室にいた。しかも若い女性の死体付の。死んでいるのは同じ文芸部の同級生山野夏希だ。前日サークルの飲み会で一緒に飲んでいたのだった。途方に暮れているところに、別のサークル仲間が山野夏希の部屋を訪ねてきて、玄関のチャイムを鳴らした。誰も返事をしないので、ドアを開けられてしまった。だが、チェーンロックがかかっていて、ドアは完全に開かない。窓の方はクレシェント錠がかかっていて、外からは入れないようになっている。これは密室なのだ。
おしゃべり鸚鵡を追いかけて
大塚雅美からの依頼は叔父の梶間修三が飼っていた鸚鵡を捜してほしいというものだった。梶間修三の娘が三日前に訪ねると、叔父は家で亡くなっていて、ドアを開けた時に鸚鵡が外に逃げて行ったのではないかという。大塚雅美は生前何かあった時には鸚鵡の世話を頼まれていたということだった。
あの夏の面影
依頼人の大原詩織は恋人の寺島英輔の様子がおかしいので調べてほしいというものだった。寺島英輔は英会話学校の講師をしており、エルザと美伽は早速聞き込みに出かけるのだが、寺島は別な女性を捜しているようなのだ。

今回面白かったのは「失われた靴を求めて」。見つからないブランド物の赤いハイヒールから組み立てられてストーリーはよくできていると思った。一方、「密室から逃げてきた男」は疑問符が付いた。密室物の場合、いくつかのパターン(実際には密室ではない、意図的に密室を作り上げた、偶然密室になってしまった)があるが、今回は「意図的に密室を作り上げた」のパターンだ。ただ、その実現性がちょっとどうなのだろうと思えるものなのだ。

それと、本シリーズは今のところ三冊出版されているが、この後続くのだろうか?今回でストーリーが終わるような雰囲気にはなっていないので、作者が続ける気があるならば、続くとは思うのだが。