隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題

東川篤哉氏の谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題を読んだ。本書は鰯のツミレならぬ岩篠つみれが狂言回しとなっている短編ミステリー。岩篠つみれの兄が岩篠なめ郎で、その兄は鰯の吾郎という鰯専門の海鮮居酒屋を谷中で開いている。その谷中を舞台にしたミステリーで、「足を踏まれた男」、「中途半端な逆さま問題」、「風呂場で死んだ男」、「夏のコソ泥にご用心」の4編が収録されている。

岩篠つみれは探偵役ではなく、物語を動かしていく役割で、語り手にもなっている。探偵役は谷中で開運グッズを売っている「怪運堂」を営んでいる竹田津優介で、岩篠なめ郎の幼なじみのはずなのだが、「なめ郎の奴」呼ばわりしている。岩篠つみれ・岩篠なめ郎という名前からして、今回の作品は、ギャグの方に思いっきり寄っている作品だろう。この4編の中では、「足を踏まれた男」が三題噺のようになっていて、面白かった。「何も取らない泥棒」、「足を踏まれた男」、「BBQに欠席のサークル仲間」がうまいこと事件につながっていくようになっている。「中途半端な逆さま問題」は読んでいる途中で終わりが見えてしまった。東川氏の作品は、もともと軽いノリのミステリーなのだから、楽しんで読めばいいのかもしれない。