隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

新 謎解きはディナーのあとで

東川篤哉氏の新 謎解きはディナーのあとでを読んだ。警視庁国立署の刑事宝生麗子は実は巨大複合企業「宝生グループ」のご令嬢という設定の連作ミステリー。風祭モータースの御曹司である風祭警部の許事件解決に励むのだが、いい加減な風祭警部の推理が間違っているということは分かるのだが、今一つ推理の冴えがない宝生麗子。大豪邸でディナーの後事件の解決のために相談するのは執事兼運転手の影山。彼の鋭い推理で事件の解決にめどをつけるというお決まりのパターンのミステリーだ。執事の影山が言葉使いは丁寧ながら、結構きついことを麗子に言うのもおなじみの展開だ。今回は新人刑事の若宮愛里が加わっている。影山は麗子の説明を聞くだけで、現場を見ることはほとんどないから、このミステリーはある意味アーム・チェアー・ディテクチブ物の変形だろう。収録されているのは5編で、「風祭警部の帰還」、「血文字は密室の中」、「墜落死体はどこから」、「五つの目覚まし時計」、「煙草二本分のアリバイ」。

「風祭警部の帰還」はアリバイ崩し、「血文字は密室の中」は密室とダイイングメッセージ、「墜落死体はどこから」は墜落死体と他殺事件の関係、「五つの目覚まし時計」と「煙草二本分のアリバイ」もアリバイ崩しで、アリバイ崩しが多い印象だ。もちろんアリバイ崩しといってもアリバイを作った方法は全く別ではある。この中で、おやっと思ったのは2編目の「血文字は密室の中」だ。土蔵の中で被害者が発見されるのだが、土蔵は鍵がかかっていて密室状態。そして、被害者の傍には「中田」という文字が。この二つ組み合わされた謎が新鮮だった。