隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

栞と噓の季節

米澤穂信氏の栞と噓の季節を読んだ。これは本と鍵の季節の2作目なのだが、私は前巻の終わりで堀川と松倉の関係が微妙になってしまったので、この物語はシリーズにはならないだろうと思っていた。だが、2作目が出版された。そして今度は長編小説だ。松倉は暫く学校にもあまり来ていなかたようで、彼の不在の間は図書委員の仕事も堀川は別の図書委員と組んでいたことになっている。そして、久しぶりに松倉が図書室にやって来た時から、事件は始まったのだ。堀川が図書委員の仕事をしているうちに、返却箱に本が返却されていた。本を返却したのは女子生徒のようだが、後ろ姿しか見ていないので、誰かはわからない。返却された本は、本の間に何か挟まっていないか調べてから、書架に戻すことになっているのだが、返却された本には、押し花をラミネート加工した栞が挟まれていた。松倉はその花はトリカブトだと指摘した。松倉は、栞は持ち主に返却するとして、花はトリカブトであると指摘すべきだろうという。そして、できるならこのことは他の図書委員には知らせない方がいいという事で二人は合意した。

こうして彼らは、栞の持ち主探しを始めるのだが、その後学校では校舎の裏でトリカブトが栽培されていたり、教師の中毒さわぎがあったりと色々なことが起こっていく。さらに複数の栞が存在しているらしいことも明らかになっていくのだった。

この小説のタイトルにもある「嘘」だが、登場人物がそれぞれ嘘をついているので、読者は最初のうちは書かれていることを100%信用してはいけない。といっても、どれが本当でどれが嘘なのかは最初のうちは分からない。話は意外な方にどんどん広がっていくのだが、最後には元の所に戻ってくる。登場人物の嘘が明かされるところがこの小説の面白さだと思うのだが、ちょっとよくわからないところも2点ある。あまり内容に触れないように書くが、最初の栞の持ち主なら、わざわざ返却などしなくても、図書室に隠せると思うのだが、なぜわざわざ返却したのだろうか?それと復活した姉妹団の目的というか、彼女がやろうとしていたことが何かよくわからなかった。