隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

恋に至る病

斜線堂有紀氏の恋に至る病を読んだ。私も詳しくは知らないが「青いクジラ」をモチーフとした作品だ。Blue Whale Challengeはロシア発祥とされ、参加者を自殺に導いたと言われている。本書では「青いクジラ」というサイトは青い蝶(ブルーモルフォ)と名前を変えて登場し、最終的には150人以上の被害者を出すことになる。そのサイトを作ったのが寄河景という女子高生で、彼女に観察者として取り込まれたのが同級生の宮嶺望だ。

以下なんとなく本書の内容に触れいている。作者はミステリーだとあとがきで述べている。そして何が謎なのかも。だが、作者は明確には答えを書いていない。ただ判断する材料は作中にあると述べるにとどまっている。

寄河景も信頼のおけない語り手で、その発言内容には嘘やごまかしが多い。なぜこんな自殺サイトを作って少年・少女を自殺に導くのかの理由もなんだか理解できない。そして、P220からは宮嶺望の知らなかった寄河景が徐々に明らかになる。それでも宮嶺望はどこかでは寄河景を救いたいと思っていたのだから、タイトルにあるように「恋に至る病」なのだろう。だがその気持ちも、自発的に宮嶺望が持ったものなのか、寄河景に誘導されたものなのかと言えば、後者だろう。最後の方で明かされた事実であるが、無くなった消しゴムを寄河景が持っていたということは、小学生時代のいじめにも寄河景がかかわっていたということなのだろうが、なぜ消しゴムを持ち続けて、しかも身に着けていたのかはわからなかった。善名美玖利に刺されるところまでは予見できなかったのは、彼女も完ぺきではなかったということなのだろうか。