隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

君の地球が平らになりますように

斜線堂有紀氏の君の地球が平らになりますようにを読んだ。一応ジャンルとしては恋愛小説に属すると思うのだが、この作者の書く物語なので、単純な恋愛ではなく、読後爽やかというような小説でもない。本書は短編集で、「君の地球が平らになりますように」、「『彼女と握手する』なら無料」、「転ばぬ先の獣道」、「大団円の前に死ぬ」、「平らな地球でキスはできない」の5編が収録されている。

タイトルが似ている「君の地球が平らになりますように」と「平らな地球でキスはできない」は登場人物が重なり合っていて、時間軸としては「平らな地球でキスはできない」の方が前になっている。東壱船という大学のサークルで2番目に人気のあった男が変な自然食品にはまり、陰謀論に絡めとられてしまった後と途中の物語で、こんな男とはまともな恋愛はできるはずがない。「『彼女と握手する』なら無料」は地下アイドルの話で、ファンが離れていくのがつらくなって、恋人を作り始める話なのだが、この中ではまともな終わり方になっている。「転ばぬ先の獣道」は誰からも好かれる人気者の彼氏を持つ女の物語。この彼氏は結婚はしたくないというが、女は結婚したい。さて、どう折り合いをつけるのかという物語なのだが、最後は「あれそうなるのか?」という感じだった。「大団円の前に死ぬ」はホストにはまっている女の前に現れたライバルは音信不通だった姉だったという物語で、この中では一番インパクトがあった。

これらの短編はストーリー的にはダークな感じがするし、思えば恋愛小説というよりも、偏愛小説なのかもしれないと思い始めた。