隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2020-01-01から1年間の記事一覧

パラ・スター 〈Side 百花〉

阿部暁子氏のパラ・スター 〈Side 百花〉を読んだ。本書は北上ラジオ第14回で紹介されていた。泣ける小説なんてもんじゃない。涙があふれ続ける小説なのだ! 阿部暁子『パラ・スター』を読むべし(電車の中以外で)!「北上ラジオ」第14回 Presented by 本の…

博士を殺した数式

ノヴァ・ジェイコブスの博士を殺した数式(原題 The Last Equation of Issac Severy)を読んだ。本の裏表紙には「祖父の死の真相に迫る暗号謎解きミステリー」となっており、その祖父が天才数学者という設定なのだから、さぞかし面白い暗号が作りこまれていて…

公家源氏―王権を支えた名族

倉本一宏 先生の公家源氏―王権を支えた名族を読んだ。公家源氏というのは倉本先生の造語のようで、学界ではまとめて「賜姓源氏」と呼ばれているが、これではいわゆる武家の源氏と区別がつかないので、この言葉を本書では使っているようである。この本は実に…

新蔵唐行き

志水辰夫氏の新蔵唐行きを読んだ。以前読んだ疾れ、新蔵と同じ主人公が登場する小説だったので、読んでみた。この小説の中で新蔵は三国屋を一時離れ、諸国を回って見聞を広める旅をしていた。実は新蔵には心に秘めたる旅の目的があり、それは三国屋の宰領で…

わけがわかる機械学習 ── 現実の問題を解くために、しくみを理解する

中谷秀洋氏のわけがわかる機械学習を読んだ。タイトルを見て、機械学習でなぜそのような結果が得られるのかに関して説明している本だと思って読んだのだが、そういう本ではなかった。しかも、私は別な勘違いもしていた。AIや人工知能という言葉が具体的に何…

熱源

川越宗一氏の 熱源を読んだ。この作品の主人公の一人は樺太出身のアイヌであるヤヨマネクフなのだが、この人物は実在の人物のようだ。そして、この小説にはマジックリアリズムの手法で書かれたのかと思わされるほど実在の人物が色々登場してくる。国語学者の…

サー・ガウェインと緑の騎士 トールキンのアーサー王物語

J・R・R・トールキンのサー・ガウェインと緑の騎士(原題 SIR GAWAIN AND THE GREEN KNIGHT)を読んだ。副題に「トールキンのアーサー王物語」とついているが、アーサー王物語なのは「サー・ガウェインと緑の騎士」だけで、その他の「真珠」、「サー・オルフェ…

ベーシックインカム

井上真偽氏のベーシックインカムを読んだ。テクノロジーを題材にした日常のミステリーの短編集。5編収録されており、それぞれのタイトルは「言の葉の子ら」、「存在しないゼロ」、「もう一度、君と」、「目に見えない愛情を」、「ベーシックインカム」となっ…

名もなき王国

倉数茂氏の名もなき王国を読んだ。この小説は私小説的な感じで、埋もれてしまっていた幻想文学作家である沢渡晃を掘り起こしたという体裁で物語は始まるのだが、何とも不思議な構成になっている。「序」を読むとそういう構成になっている。作者の私と、友人…

時間は存在しない

カルロ・ロヴェッリの時間は存在しない (原題 L'ordine del tempo)を読んだ。本書は難解だ。そのことをわきに置いておいても、日本語タイトルがミスリードだ。日本語のタイトルは「時間は存在しない」となっているが、まず筆者が言っているのは、我々がずー…

キリオン・スレイの敗北と逆襲

都筑道夫氏のキリオン・スレイの敗北と逆襲を読んだ。キリオン・スレイシリーズの最終巻で、初めての長編作品。キリオン・スレイもいつの間にか日本を離れて、ニューヨークに帰っており、しかも音信不通になっているので、その消息を知る者は誰もいなかった…

FreeBSD NanoPi NEO2上でpowerdが使えるようになった

FreeBSDにはpowerdという機能があり、CPUの負荷状況をモニタリングして、CPUのクロックを制御してくれる。この機能を使うにはcpufreqがkernelに必要で、arm/Allwinner - FreeBSD Wikiを見る限りはAllwinnerでも使えるように見える。しかし、NaoPi NEO2を普通…

国語教師

ユーディト・W・タシュラーの国語教師(原題 Die Deutschlehrerin)を読んだ。タイトルの国語教師とはマティルダ・カミングスキーのことだ。彼女はインスブルックの女子校で国語教師をしている。彼女の勤める聖ウルスラ女子ギムナジウムが「生徒と作家のワーク…

オルシニア国物語

アーシュラ・K・ル・グィンのオルシニア国物語(原題 ORSINIAN TALES)を読んだ。本書はル・グインによって書かれていて、早川文庫のSFのカテゴリーになっているし、タイトルもそれっぽいので、てっきりファンタジーだと思っていた。しかし、これはファンタジ…

ザリガニの鳴くところ

ディーリア・オーエンズのザリガニの鳴くところ (原題 Where the Crawdads Sing)を読んだ。この作品は北上ラジオの第13回目で紹介されていた。ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』は、2020年を代表する素晴らしい小説だ!「北上ラジオ」第13回 P…

とてつもない失敗の世界史

トム・フィリップスのとてつもない失敗の世界史(原題 HUMANS A Brief History of How We F*cked It All Up)を読んだ。本書は我々人類が過去から未来にわたって犯してきた愚かしいミスをあげつらった本である。扱っている範囲は広範囲で、環境、外来種、独裁…

シルヴィーとブルーノ

ルイス・キャロルのシルヴィーとブルーノ (原題 Sylvie and Bruno)を読んだ。この物語はシルヴィーとブルーノという姉弟のストーリーと、私とその若き友アーサー・フォレスターのミリュエル嬢をめぐるストーリーが入れ子のように語られていく。シルヴィーと…

ドグラ・マグラ

夢野久作のドグラ・マグラを読んだ。この本を読むのも2回目で、1回目は多分1990年代の何時かがだったのだと思うが、正確には記憶していない。きっと、匣の中の失楽を読んで、虚無への供物を読んで、ドグラ・マグラを読んだのではないかと想像しているのだが…

四神の旗

馳星周氏の四神の旗を読んだ。 北上ラジオの第15回目で紹介されていた。「馳星周の新境地の傑作だ!」と『四神の旗』(中央公論新社)を書評家・北上次郎が熱烈推薦!「北上ラジオ」第15回 - YouTubeこの小説は藤原不比等の4人の息子、武智麻呂、房前、宇合…

キリオン・スレイの再訪と直感

都筑道夫氏のキリオン・スレイの再訪と直感を読んだ。キリオン・スレイシリーズの短編集の最終巻だ。本書には六編収められており、それぞれのタイトルは「如雨露と綿菓子が死につながる」、「三角帽子が死につながる」、「下足札が死につながる」、「女達磨…

銀花の蔵

遠田潤子氏の銀花の蔵を読んだ。この作品は北上ラジオの第16回目で紹介されていた。 「年間のベスト3には入る作品だよ!」と遠田潤子『銀花の蔵』(新潮社)を猛烈紹介! - YouTube銀花は主人公の女性の名前で、蔵は醤油蔵を指している。序章は現在なのだが…

FreeBSD NanoPi NEO2上で全てのUSBを有効にし、無事にNAS Kitでブートできるようになった

2021/7/27追記 overlay dtsの定義をより相応しいものに置き換えた。 2020/6/20追記 起動しない原因がNAS kitに由来するもので、LTSとは関係ないので、内容及びタイトルを一部修正前回の調査でUSBマスストレージが認識されていないので、起動できないところま…

人体、なんでそうなった?

ネイサン・レンツ の人体、なんでしょうなった?(原題 HUMAN ERRORS. A Panorama of Our Glitches, from Pointless Bones to Broken Genes)を読んだ。本書は我々の体にはいかに多くの欠陥があるかということを解説した本だ。本書ではたびたび「デザイン」と…

FreeBSDとu-boot再び

2020/6/20追記 起動しない原因がNAS kitに由来するもので、LTSとは関係ないので、内容及びタイトルを一部修正以前NanoPi NEO2 NAS kitでu-bootが動かないということを書いた。 prozorec.hatenablog.com その後もなんとなくこのことが頭に残っていて、思いつ…

まち

小野寺史宜氏のまちを読んだ。これは北上ラジオの第11回で紹介されていた。『まち』小野寺史宜(祥伝社)の傑作を読もう! 北上次郎「北上ラジオ」第11回 Presented by 本の雑誌社 - YouTube 瞬一は東京に出ろ。東京に出て、よその世界を知れ。知って、人と…

四人組がいた。

高村薫氏の四人組がいた。を読んだ。タイトルに「。」がついているのも最近の流行りを取り入れたのだろうか。四人組というぐらいだから主要な登場人物は4人いる。元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母さんの4人。元村長、元助役、キクエ小母の三人はどう見…

逆転のイギリス史 衰退しない国家

玉木俊明氏の逆転のイギリス史 衰退しない国家を読んだ。本書はイギリスの歴史について、特に経済の観点から記述した本なのだ。「逆転」とタイトルについているのは、世界の覇権がオランダからイギリスに移り変わっていたことをさしているのだろうが、その後…

夏の終わりに君が死ねば完璧だったから

斜線堂有紀氏の夏の終わりに君が死ねば完璧だったからを読んだ。いわゆる結核文学の一形態だと思うのだが、設定はちょっとひねっている。主人公は中学3年生の江都日向えとひなたは劣悪な家庭環境にいた。母親は家の近くにあるサナトリウムの反対運動をしてい…

へぼ侍

坂上泉氏のへぼ侍を読んだ。へぼ侍とは志方錬一郎の事である。志方家は三河以来の徳川家臣で、大阪東町奉行所の与力として数代前から大阪に土着していた。奉行所の御役目の傍ら、剣術の町道場を営み、武士や町人に指南している家柄であったが、幕末の時、錬…

キリオン・スレイの復活と死

都筑道夫氏のキリオン・スレイの復活と死を読んだ。キリオン・スレイシリーズの2冊目。本書には「ロープウエイの霊柩車」、「情事公開同盟」、「八階の次は一階」、「二二が死、二死が恥」、「なるほど犯人は俺だ」、「密室大安売り」、「キリオン・スレイの…