隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ミステリー

ベーシックインカム

井上真偽氏のベーシックインカムを読んだ。テクノロジーを題材にした日常のミステリーの短編集。5編収録されており、それぞれのタイトルは「言の葉の子ら」、「存在しないゼロ」、「もう一度、君と」、「目に見えない愛情を」、「ベーシックインカム」となっ…

キリオン・スレイの敗北と逆襲

都筑道夫氏のキリオン・スレイの敗北と逆襲を読んだ。キリオン・スレイシリーズの最終巻で、初めての長編作品。キリオン・スレイもいつの間にか日本を離れて、ニューヨークに帰っており、しかも音信不通になっているので、その消息を知る者は誰もいなかった…

国語教師

ユーディト・W・タシュラーの国語教師(原題 Die Deutschlehrerin)を読んだ。タイトルの国語教師とはマティルダ・カミングスキーのことだ。彼女はインスブルックの女子校で国語教師をしている。彼女の勤める聖ウルスラ女子ギムナジウムが「生徒と作家のワーク…

ドグラ・マグラ

夢野久作のドグラ・マグラを読んだ。この本を読むのも2回目で、1回目は多分1990年代の何時かがだったのだと思うが、正確には記憶していない。きっと、匣の中の失楽を読んで、虚無への供物を読んで、ドグラ・マグラを読んだのではないかと想像しているのだが…

キリオン・スレイの再訪と直感

都筑道夫氏のキリオン・スレイの再訪と直感を読んだ。キリオン・スレイシリーズの短編集の最終巻だ。本書には六編収められており、それぞれのタイトルは「如雨露と綿菓子が死につながる」、「三角帽子が死につながる」、「下足札が死につながる」、「女達磨…

キリオン・スレイの復活と死

都筑道夫氏のキリオン・スレイの復活と死を読んだ。キリオン・スレイシリーズの2冊目。本書には「ロープウエイの霊柩車」、「情事公開同盟」、「八階の次は一階」、「二二が死、二死が恥」、「なるほど犯人は俺だ」、「密室大安売り」、「キリオン・スレイの…

恋と禁忌の述語論理

井上真偽氏の恋と禁忌の述語論理を読んだ。本書は連作短編で、「スターアニスと命題論理」、「クロスノットと述語論理」、「トリプレッツと様相論理」の三つのミステリーと「恋と禁忌の……?」のおまけの4編が収録されている。本書はミステリーなのだが、そ…

匣の中の失楽

竹本健治氏の匣の中の失楽を読んだ。この本を読むのは2回目で、最初に読んだ時からは多分25年以上は経過していると思う。なので、細部に関してはあまり覚えていなかったし、この本の仕掛けについても、間違って記憶していた。主要な登場人物は12人で、彼らは…

不連続殺人事件

坂口安吾の不連続殺人事件を読んだ。実際には創元推理文庫の日本探偵小説全集の坂口安吾集に収録されている作品を読んだ。この本をいつ購入したのかは正確に覚えていないが、多分30年ぐらい前ではないだろうか。買った当時も不連続殺人事件を読もうとしたの…

時空旅行者の砂時計

方丈貴恵氏の時空旅行者の砂時計を読んだ。本作は第29回鮎川哲也賞を受賞した作品で、SF+ミステリーの構成をとっている。SFのところは主人公で探偵役となる加茂冬馬が不思議な声にいざなわれて過去の世界にタイムスリップするところなのだが、実はミステリー…

キリオン・スレイの生活と推理

都筑道夫氏のキリオン・スレイの生活と推理を読んだ。手元にあるのは昭和53年第三版発行の文庫本で、42年前の本になる。amazonで検索してみても、再版されていないようで、絶版のようだ。実はこの本は最初に買った都筑氏の本だ。都筑氏の事は多分以前から知…

イブリン嬢は7回殺される

スチュアート・タートンのイヴリン嬢は七回殺される(原題 The Seven Deaths of Evelyn Hardcastle)を読んだ。気づいた時には「アナ」と叫んでいた。そこは森の中で、しとしとと雨が降っていた。自分が誰かもわからない。名前は?ここはどこだ?どこからここ…

狐火の辻

竹本健治氏の狐火の辻を読んだ。湯河原のあたりで噂されている不思議な話・都市伝説の裏には実際に事件があったという感じのミステリーだ。最初の「序としての断章」にそれらの話が語られている。一つは森の奥の沼のそばに隠れ家があり、そこには黒いマント…

魔法使いと最後の事件

東川篤哉氏の魔法使いと最後の事件を読んだ。さらば愛しき魔法使いの最後で雑誌に魔法を使っているところをスクープされてしまい、魔法使いマリィが突然いなくなってしまったので、このシリーズは終わりなのだろうなぁと漠然と思っていたら、続巻が出た。人…

いけない

道尾秀介氏のいけないを読んだ。本書は蝦蟇倉市を舞台にした連作短編のミステリーだ。4編納められており、「弓投げの崖を見てはいけない」、「その話を聞かせてはいけない」、「絵の謎に気づいてはいけない」、「町の平和を信じてはいけない」がそれぞれのタ…

きまぐれ砂絵

都筑道夫氏のきまぐれ砂絵を読んだ。落語推理 迷宮亭を読んで、久しぶりになめくじ長屋捕り物さわぎシリーズを読みたくなったのだが、これを最初に読んだのは多分今から30年以上前なので、内容に関してはかなり記憶があいまいになっていた。自分の記憶では、…

Iの悲劇

米澤穂信氏のIの悲劇を読んだ。周辺市町村が合併して誕生した南はかま市。その東側に位置した旧・間野市の更に東端に蓑石という村があった。市街地を抜け、交通量の少ない山道を渓流に沿って進んでいくと、左右から暗い山が迫ってくる。道が消えてしまうよう…

生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者

アンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者(原題 The Naturalist)を読んだ。アメリカの北西部、カナダとの故郷に位置するモンタナ州、その山中のフィールドワークをしていた生物情報工学の教授であるセオ・クレイはジョニパー・パーソンズの…

まほり

高田大介氏のまほりを読んだ。まほりが何を意味するかに触れてしまうと、ネタバレになってしまうので書けない。途中で末保利のことだというのがわかるのだが、実はこれは万葉仮名で書いているだけで、それが何であるかを表していない。この物語は二人の視点…

medium 霊媒探偵城塚翡翠

相沢沙呼氏のmedium 霊媒探偵城塚翡翠を読んだ。推理作家の香月史郎は大学時代のサークルの後輩である倉持結花に頼まれて同行した先で霊媒師の城塚翡翠に会った。霊媒師の彼女は、死者の匂いを感じることができるという。結花は町中の占い師に見てもらってか…

インソムニア

辻寛之氏のインソムニアを読んだ。物語は、2017年2月、アフリカ中央部に位置する南ナイルランドで平和維持活動に従事する自衛隊に、現地で活動する国際NGOから緊急要請が入ったところから始まる。ジュベルを拠点に医療分野で活動するNGOの移動診療車両が行方…

雪が白いとき、かつそのときに限り

陸秋槎氏の雪が白いとき、かつそのときに限り(原題 当且仅当雪是白的)を読んだ。このミステリーには2つの事件が描かれている。5年前の事件と、そして、今回の事件。これらの事件は中国南部のZ市の高校で、冬の雪の降った真夜中に起きた。事件発生時には雪は…

落語推理 迷宮亭

落語推理 迷宮亭を読んだ。本書は落語とミステリーを合わせたアンソロジーになっていて、収録作は「変調二人羽織(連城三紀彦)」、「貧乏花見殺人事件(我孫子武丸)」、「崇徳院(伽古屋圭市)」、「幻燈(快楽亭ブラック)」、「落語家変相図(大下宇陀字)」、「落…

早朝始発の殺風景

青崎有吾氏の早朝始発の殺風景を読んだ。いわゆる日常のミステリーの連作短編集。千葉県の幕張あたりにある架空の沿線を舞台にした日常のミステリーで、登場人物がその沿線にある高校の学生というのが共通の設定になっている。収録作品は、「早朝始発の殺風…

虚構推理 スリーピング・マーダー

城平京氏の虚構推理 スリーピング・マーダーを読んだ。虚構推理シリーズの3作目。妖怪や化け物から相談を受ける「知恵の神」である岩永琴子と件と人魚を食べたことにより、予知能力と不老不死の力を得た桜川九郎のコンビのミステリー。そう、今回はミステリ…

刀と傘

伊吹亜門氏の刀と傘を読んだ。これは連作短編のミステリーで、幕末から明治の最初の頃が舞台になっている。そして、一方の主人公が実在の人物である江藤新平で、もう一人の主人公が架空に人物と思われる尾張藩公用人の狩野師光である。この二人が探偵役なの…

ノースライト

横山秀夫氏のノースライトを読んだ。これは北上ラジオの第3回目で紹介されていた。本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第3回 - YouTube横山秀夫氏というと警察小説で、主人公は捜査関係の刑事ではない警察職員というイメージがあったのだが、この小説はミステリ…

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

降田天氏の偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理を読んだ。これは短編集で、倒叙物のミステリーだ。ストーリーの前半は犯人によって物語が語られていくが、後半に入ると、神倉駅前交番に勤務する狩野雷太が登場して、犯人と狩野の対決(と言っても、話し好き…

虚構推理短編集 岩永琴子の出現

城平京氏の虚構推理短編集 岩永琴子の出現を読んだ。前作を読んでから3年も経過しているので、前作の事はあまり記憶に残っていないのだが、前作を読んでいなくても、本作を読むのに問題はなかった。ストーリー的には完全に独立した短編集になっている。妖怪…

乗客ナンバー23の消失

セバスチャン フィツェックの乗客ナンバー23の消失(原題 PASSENGER 23)を読んだ。ドイツ人の潜入捜査官マルティン・シュヴァルツはある出来事をきっかけに、本当に命知らずの危険な任務に就いていた。そして、今回も危険な潜入捜査を終えたところに、見知ら…