隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2022-01-01から1年間の記事一覧

Babel III 鳥籠より出ずる妖姫

古宮九時氏のBabel III 鳥籠より出ずる妖姫を読んだ。前巻の最後で雫は誰かに拉致されたところで終わっていたのだが、拉致された先はファルサスの隣国のキスクで、そこで雫は謎の病の治療をすることになったのだ。その病はその世界の話し言葉と深く関係して…

Babel II 魔法大国からの断罪

古宮九時氏のBabel II 魔法大国からの断罪を読んだ。前巻の終わりでどこかわからない場所に転移してしまった雫とエリクだったが、彼らが辿り着いたのは大陸のほぼ西側で、大陸の東の方から目的地のファルサス王国を飛び越えてしまった。ファルサス自体は大陸…

Babel I 少女は言葉の旅に出る

古宮九時氏のBabel I 少女は言葉の旅に出るを読んだ。本書は、女子大生の水瀬雫が真夏の暑い日に道を歩いていると、黒い影のようなものが合わられて、何だろうと不思議に思っていると、その影の中に吸い込まれて、気づいてた異世界にいたことから始まるファ…

ハーバード日本史教室

佐藤智恵氏のハーバード日本史教室を読んだ。ハーバード大学で日本史がどのように教えられているのかが具体的に書かれている(使用するテキストとか、どのような議論がなされるのかなど)本なのかと思って、読みだしたのだが、実際にはハーバード大学において…

津田梅子 科学への道、大学の夢

古川安氏の津田梅子 科学への道、大学の夢 を読んだ。以前から不思議に思っていたのだが、明治政府は5人の少女をアメリカ留学に送り出したが、これは明治政府の中の誰の案なのだろう?どういう組織がかかわっていたのだろう?そして、その目的あるいは期待し…

時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙

ブライアン・グリーンの時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙(原題 Until the End of Time Mind, Matter and Our Search for Meaning in Evolving Universe)を読んだ。物理学者ブライアン・グリーンが生命誕生から宇宙の終焉までを解説する。本書…

蝶として死す

羽生飛鳥氏の蝶として死す 平家物語推理抄を読んだ。時代は平安末期の頃で、いわゆる平家が台頭し滅んでいく頃である。池殿流平家の頼盛を主人公にして、頼盛に降りかかってくる難題を何とか知恵でかわしていくというミステリーが本書の概略だ。頼盛は清盛の…

サーキット・スィッチャー

安野貴博氏のサーキット・スィッチャーを読んだ。本書は第9回ハヤカワSFコンテストの優秀賞受賞作だ。物語の時代設定は2029年で、近未来という事になる。その時代にはレベル5の完全自動運転が実用化されており、その自動運転のアルゴリズムの開発ベンチャー…

北緯43度のコールドケース

伏尾美紀氏の北緯43度のコールドケースを読んだ。本作は第67回江戸川乱歩賞受賞作である。物語の舞台は札幌の警察であり、タイトルに「コールドケース」とついているように未解決事件を扱ったミステリーだ。物語は取り壊されることになっていた倉庫で少女の…

ロボットには尻尾がない

ヘンリー・カットナーの ロボットには尻尾がない (原題 Robots Have No Tails)を読んだ。アル中の発明家ギャロウェイ・ギャラガーが酔っ払っている時にとてつもないものを発明して、それにまつわるトラブルに悩まされるというSF調のドタバトコメディー。ギャ…

AI監獄ウイグル

ジェフリー・ケインのAI監獄ウイグル (原題 The Perfect Police State)を読んだ。数年前から新疆ウイグル自治区で行われていると言われている著しい人権侵害について書かれている本だ。色々な所から入ってくる情報を見ていて、なんとなくわかっているつもり…

黛家の兄弟

砂原浩太朗氏の 黛家の兄弟を読んだ。架空の神山藩を舞台にした時代小説。時代は宝暦の頃の事と思われる。タイトルにある黛家は神山藩で筆頭家老を勤める家系の家柄で、栄之丞、壮十郎、新三郎の三兄弟がいた。その藩の次席家老の漆原家の娘が藩主の側室にな…

進化の技法――転用と盗用と争いの40億年

ニール・シュービンの進化の技法――転用と盗用と争いの40億年 (原題 SOME ASSEMBLY REQUIRED: Decoding Four Billion Years of Life, from Ancient Fossils to DNA)を読んだ。本書は生命の大進化が起きる仕組みを、生命科学の発見の歴史と絡めて解説した本だ…

深層学習の原理に迫る 数学の挑戦

今泉允聡氏の深層学習の原理に迫る 数学の挑戦を読んだ。本書は深層学習がなぜ既存のニューラルネットワークに比べて高い性能が出るのかについて解説している。数学的側面から解説はしているが、難しい数式は殆ど出てこない。 多層の理由 普遍近似定理で「層…

同志少女よ敵を撃て

逢坂冬馬の同志少女よ敵を撃てを読んだ。本書は第11回アガサ・クリスティー賞受賞作で、北上ラジオの第40回で紹介されていた。甘さが微塵もなく非常に緊密な冒険小説『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬(早川書房)の登場に驚愕すべし!【北上ラジオ#40】 - Y…

らんたん

柚木麻子氏のランタンを読んだ。恵泉女学園の創始者である河井道の物語。明治・大正・昭和と非常に長い時間を描いている物語で、全く財力も資金もない女性が学校を創設し、育てていく様を、色々な人物との交流を通して描いている。多数の実在の人物が登場し…

本心

平野啓一郎氏の本心を読んだ。この作品は北上ラジオの第36回で紹介されていた。たっぷり楽しませてくれる平野啓一郎『本心』(文藝春秋)を読むべし!【北上ラジオ#36】 - YouTube物語は母子家庭で育った主人公の石川朔也が亡くなった母の喪失感を埋めるため…

消失の惑星

ジュリア・フィリップスの消失の惑星ほし(原題 DISAPPEARING EARTH)を読んだ。本書はロシアのカムチャッカ半島を舞台にしている小説なので、ロシア人の作家が書いた小説だと思っていたのだが、作者のフィリップスはアメリカ人だ。高校生の頃からロシアに興味…

沙漠と青のアルゴリズム

森晶麿氏の沙漠と青のアルゴリズムを読んだ。この物語は色々なストーリーが多層的に積み重なっていて、かなり読み進めないと、どれが物語的事実で、どれが物語的虚構なのかよくわからなくて、なかなか理解するのに苦労した。この状況は本書でも著者により、…

犬神家の戸籍

遠藤正敬氏の犬神家の戸籍を読んだ。言わずと知れた横溝正史の犬神家の一族をネタ元にして、戸籍制度について論じた本だ。犬神家の一族はフィクションであり、横溝正史がどこまで法律の知識を持っていたかはわからないので、厳密に突っ込みを入れるのも野暮…

ディープラーニング 学習する機械 ヤン・ルカン、人工知能を語る

ヤン・ルカンの「ディープラーニング 学習する機械 ヤン・ルカン、人工知能を語る」を読んだ。本書はヤン・ルカンの研究者としてのこれまでの歩みを語りつつ、ディープラーニングの内容について易しく概要を説明している。畳み込みニューラルネットに関して…

絞め殺しの樹

河崎秋子氏の絞め殺しの樹を読んだ。この作品は北上ラジオの第43回で紹介されていた。 最後には根源的な力がむくむくと湧いてくる『絞め殺しの樹』川﨑秋子(小学館)を手に取るべし!【北上ラジオ#43】 - YouTube何とも物騒なタイトルの小説だというのが、…

まぜるな危険

高野史緒氏のまぜるな危険を読んだ。本書は短編集で、「アントンと清姫」、「百万本の薔薇」、「小ねずみと童貞と復活した女」、「プシホロギーチェスキー・テスト」、「桜の園のリディヤ」、「ドグラートフ・マグラノフスキー」の6編が収録されている。本書…

居酒屋「一服亭」の四季

東川篤哉氏の 居酒屋「一服亭」の四季を読んだ。純喫茶の姉妹編だろう。この本でも安楽椅子探偵の椅子よりこさんが謎を解くのだが、今回は純喫茶ではなく、古民家風の居酒屋になっていて、店の名前も「一服亭」と微妙に変わっている。しかも、この作品の椅子…

純喫茶「一服堂」の四季

東川篤哉氏の純喫茶「一服堂」の四季を読んだ。本書は短編集で、4編収録されたおり、「春の十字架」、「もっとも猟奇的な夏」、「ひり取られた死体の秋」、「バラバラ死体と密室の冬」がそれぞれのタイトルだ。この作品は一服堂という純喫茶を父親から譲り受…

二人の嘘

一雫ライオン氏の 二人の嘘を読んだ。この本は北上次郎氏が本の雑誌で紹介していて、「目が離せない」、「前三作を急いで買ってきて、これから読むところである」と書いていたので、気になった本だ。www.webdoku.jp片陵礼子が以前判決を起案して、実刑を受け…

殺した夫が帰ってきました

桜井美奈氏の殺した夫が帰ってきましたを読んだ。これはまさにタイトル通りの導入から始まる物語だ。鈴倉茉奈は取引先の男からストーカのような付きまといにあい、その男は住んでいるアパートまで押しかけてきた。そこに割って入ってきたのが、殺したはずの…

子供は怖い夢を見る

宇佐美まこと氏の子供は怖い夢を見るを読んだ。この本は表紙のデザインを見ると暗い感じだし、「怖い夢」というようなタイトルがついているのでホラー小説であるような印象を与える。しかし、読みだすと、小説のテーマは貧困とか、児童虐待・いじめとか、新…

NanoPi NEO2 NAS kitのHDDが壊れたかもしれない

「HDDが壊れたかもしれない」と書いているのは100%確信がないからで、今までHDDが壊れた時はセクターへのリード・ライトが失敗して、エラーが表示されるというわかりやすい問題が発生したか、そもそもドライブがスピンしなくなって、全く使えなくなった場合…

底惚れ

青山文平氏の底惚れを読んだ。読み始めてすぐ、「これは読んだことがあるぞ」と強烈な既視感に襲われた。もう一度タイトルを見た。出版日も見直した。最近出版された本だ。しかし、このストーリーは「江戸染まぬ」じゃないか。でも、短編ではない。どうやら…