隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2022-01-01から1年間の記事一覧

空をこえて七星のかなた

加納朋子氏の空をこえて七星のかなたを読んだ。本の雑誌で北上氏が「これほど読後感のいい小説も珍しい」と書いていて、興味を持って読んでみた。www.webdoku.jpそこで紹介されているのは短編は、廃部の危機にあった文芸部員、天文部、オカルト研究会が合併…

raspberry pi 4Bを買った、FreeBSD13.1のインストールをした

きっかけはHDDが壊れたかもしれない事だった。あのHDDに全面にわたりランダムデータを書き込んでみたが、エラーは発生しなかった。その後にセルフテストしたが、エラーは検出されなかった。そうなるとこれは本当に壊れたのだろうかという疑問が湧いてきた。…

爆弾

呉勝浩氏の爆弾を読んだ。物語は冴えない中年の男が警察で取り調べを受けている所から始まる。名前はスズキタゴサク、年齢49歳。酒屋の自動販売機をけっているのを止めに入った店員を殴り捕まった。本人曰く、家で缶チューハイを飲みながらジャイアンツ―ドラ…

英文法を哲学する

佐藤良明氏の英文法を哲学するを読んだ。本書を読んで、今まで中学・高校で学んだ英文法の中のいわゆる5文型からどこかの時点で解き放たれるべきだったのであろうという事を強く感じた。何の前提知識のない子供にとっては5文型は十分有用なのだろうが、あれ…

数学の大統一に挑む

エドワード・フレンケルの数学の大統一に挑む (原題 Love and Math The Heart of Hidden Reality)を読んだ。エドワード・フレンケルは旧ソビエト出身の数学者で、現在はラングランズ・プログラムという数学の中の異なる分野間の概念にお互いに密接に関係して…

彼女。 百合小説アンソロジー

本の雑誌で北上次郎氏が「彼女。」の中の「恋澤姉妹」に注目していたので、読んでみた。www.webdoku.jp本書はアンソロジーで、収録されている作品は 椿と悠 (織守きょうや) 恋澤姉妹 (青崎有吾) 馬鹿者の恋 (武田綾乃) 上手くなるまで待って (円居挽) 百合で…

E=mc2のからくり エネルギーと質量はなぜ「等しい」のか

山田克哉氏のE=mc2のからくり エネルギーと質量はなぜ「等しい」のかを読んだ。E=mc2はあまりにも有名な式であるけれど、アインシュタインはいったいこの式をどのように導き出したのかは以前から不思議に思っていて、この式だけではなく、どのような発想で相…

捜索者

タナ・フレンチの捜索者 (原題 The Searcher)を読んだ。本作品は北上ラジオの第46回で紹介されていた。出たぞ!この本が2022年のベスト1だ! 『捜索者』タナ・フレンチ(ハヤカワ文庫)を信じて読んでくれ!【北上ラジオ#46】 - YouTubeシカゴ警察を辞…

愚かな薔薇

恩田陸氏の愚かな薔薇を読んだ。ジャンル的にはファンタジーになると思うのだが、何か非常に土俗的な感じがするストーリーだった。場所も盤座という土地だけが舞台になっていて、そこで行われる祭りからその感じがするし、その地にキャンプと称して集められ…

白の闇

ジョゼ・サラマーゴの白の闇(原題 ENSAIO OBRE A CEGUEIRA)を読んだ。それは何の前触れもなく突然始まった。だいたいの人は前触れがあってもそれに気づかず、何かが突然起こったと思うのだが、この場合は本当に何の前触れもなかった。ある時車を運転していて…

スピルオーバー――ウイルスはなぜ動物からヒトへ飛び移るのか

デビッド・クアメンのスピルオーバー――ウイルスはなぜ動物からヒトへ飛び移るのか (原題 Spillover Animal Infections and the Next Human Pandemic)を読んだ。スピルオーバーとは異種間伝播のことで、異なった種の間でウィルスや細菌が感染することである。…

図説 中世ヨーロッパの商人

菊池雄太(編著)氏の図説 中世ヨーロッパの商人を読んだ。以前会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 - 隠居日録を読んだ。この本は会計の歴史ではあるが、ある種経済史でもあり、ヨーロッパの商人の歴史をルネッサンス以降の時代から語っ…

宙ごはん

町田そのこ氏の宙ごはんを読んだ。本作品は北上ラジオの第45回で紹介されていた。家族の正しいかたちを求めて格闘する『宙ごはん』町田そのこ(小学館)を手に取るべし【北上ラジオ#45】 - YouTube主人公はタイトルにある宙そらちゃんという女の子で、この子…

計算する生命

森田真生氏の計算する生命を読んだ。本書は「心」と「身体」と「数学」とを結び合わせて綴られた数学エッセイである。人間にとって数えるという事の起源から語り始め、それから代数に話が広がり、代数と幾何の結びつき(図形の本質が方程式であるという視点)…

対テロ工作員になった私

トレイシー・ワルダーの対テロ工作員になった私「ごく普通の女子学生」がCIAにスカウトされて (原題 THE UNEXPECTED SPY)を読んだ。タイトルにある通り(だが、日本語のタイトルはちょっと誇張し過ぎていると思うが)、教師志望の普通の女子大生がCIAを就職先…

匿名作家は二人もいらない

アレキサンドラ・アンドリューズの匿名作家は二人もいらない(原題 Who is Maud Dixon?)を読んだ。英語の原題にあるモード・ディクソンは処女作がベストセラーになった匿名作家のことで、本名はヘレン・ウィルコックスだ。プロローグではそのヘレンがモロッコ…

夜の都

山吹静吽氏の夜の都 を読んだ。何とも言えない不思議な小説だった。大正時代に父と義母とともに日本にやって来た14歳の少女ライラは、父の仕事の間保養地のホテルで過ごすことになった。ホテルの近くにある古い祠に迷い込んだライラは、岩窟の中にある岩井戸…

かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖

宮内悠介氏のかくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖を読んだ。この作品は連作短編ミステリーで、著者自身が第一話の覚書で明かしているように、アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」の形式を明治時代の実在の芸術家のパンの会に当てはめている。メイ…

銀河の片隅で科学夜話 物理学者が語る、すばらしく不思議で美しい この世界の小さな驚異

全卓樹氏の銀河の片隅で科学夜話を読んだ。ジャンルとしては科学エッセイで、平易な文章で書かれていて、非常に読みやすい。この中で特に印象に残ったのは第13夜に出てきた「ガラム理論」だ。ガラム理論とはフランスの理論物理学者のセルジュク・ガラムが、…

密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック

鴨崎暖炉氏の密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリックを読んだ。本書は、 「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」 という事が裁判所により認定された世界での密室を扱ったミステリーだ。そういう意味ではある種の特殊な世界でのミステリ…

九つの物語

サリンジャーの九つの物語 (原題 Nine Stories)を読んだ。TVアニメ 攻殻機動隊SACのcomplexエピソードは通称「笑い男事件」を扱っている。そして、第9話、第20話で事件とサリンジャーの小説の関連性が指摘されている。特に第20話の中では、草薙素子に「確か…

名探偵と海の悪魔

スチュアート・タートンの名探偵と海の悪魔を読んだ。タートンは非常にトリッキーな「イブリン嬢は7回殺される」でデビューした作家で、本作は第2作目だ。「イブリン嬢は7回殺される」と比べると「名探偵と海の悪魔」はオーソドックスなつくりになっていて、…

ガラスの顔

フランシス・ハーディングのガラスの顔 (原題 A Face Like Glass)を読んだ。今度の物語の舞台は地底都市カヴェルナで、全くの架空の世界で展開するファンタジーになっている。地底世界に住んでいる住人は自然な顔の表情というものがなく、作られた表情を覚え…

幕末社会

須田努氏の幕末社会を読んだ。どの年代からを幕末と呼ぶかはいろいろ意見はあるだろうが、著者は天保時代からを幕末ととらえていて、本書では天保時代から取り上げている。いわゆる幕末も1868年に近づけば近づくほど、とてつもなく色々な出来事が起こってき…

鎌倉公方と関東管領 (対決の東国史 4)

植田真平氏の鎌倉公方と関東管領を読んだ。本書は対決の東国史シリーズの一冊で、室町時代の中頃までを鎌倉公方と関東管領という切り口で解説した本だ。 鎌倉公方・関東管領 鎌倉公方と言えば、室町時代にも鎌倉に駐在し、関東に睨みを利かせていた室町幕府…

スタッフロール

深緑野分氏のスタッフロールを読んだ。タイトルから想像できるように今回は映画の話で、ミステリーでもSFでもファンタジーでもない。物語は2部構成になっていて、第一部のマチルダ・パートは第二次世界大戦後の1948年アメリカで始まる。主人公はマチルダ・セ…

ヒトはなぜ戦争をするのか?―アインシュタインとフロイトの往復書簡

アインシュタインとフロイトの往復書簡 ヒトはなぜ戦争をするのか?を読んだ。 講談社のサイトにこの本の紹介があって、興味を持ったので読んでみた。「人はなぜ戦争をするのか」アインシュタインとフロイトが話し合った「壮大な問題」(講談社学術文庫) @ge…

八月の母

早見和真氏の八月の母を読んだ。この小説は北上ラジオの第44回で紹介されていた。大切なことは敵をつくることではなく自分の力で立つことだ!『八月の母』早見和真(KADOKAWA)は2022年のベスト3に入ると断言!【北上ラジオ#44】 - YouTube「八月は母の匂い…

戦争プロパガンダ 10の法則

アンヌ・モレリの戦争プロパガンダ 10の法則(原題 Principes élémentaires propagande de guerrel)を読んだ。本書は1928年にロンドンで出版されたアーサー・ポンソンビーの「戦争の嘘」に書かれている戦争のプロパガンダの10項目の法則について、著者のモレ…

Babel IV 言葉を乱せし旅の終わり

古宮九時氏のBabel IV 言葉を乱せし旅の終わりを読んだ。このシリーズの最終巻で、なぜこの大陸には共通言語があるのか、なぜ異世界から迷い込んできた雫は言葉に不自由しなかったのかの謎が解き明かされている。それだけではなく、Babel Iから登場していた…