隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

歴史

気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年 (2)「江戸時代」

田家康氏の気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年の後半。前半はこちら。 江戸時代 寛永の飢饉 寛永十三(1636)年から旱魃による凶作の記録が出てくる。寛永十五(1638)年から寛永十八(1641)年にかけて、畿内から西日本にかけて家畜牛の大量死が記…

気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年 (1)「奈良時代から室町時代まで」

田家康氏の気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年を読んだ。長くなったので2分割とした。後編はこちら。本書を読むと日本では本当に昔から天候不順を契機に飢饉が発生し、多くの人々の命が奪われてきたことに驚く。それから比べると、農業技術の…

公卿会議―論戦する宮廷貴族たち

美川圭氏の公卿会議―論戦する宮廷貴族たちを読んだ。藤原道長の日常生活で倉本先生が書かれていた平安貴族に対する現代人のイメージはどうやら50年前に土田直志鎮という歴史学の先生の言葉がオリジナルのようだ。摂関政治期には、重大な問題があれば、陣定と…

反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー

ジェームズ・C・スコットの反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー (原題 Against the Grain A Deep History of the Earliest States)を読んだ。本書では、人類がどのように国家を作り上げてきたのかということを考察している。人類が、狩猟採取→農耕…

クララ・ホイットニーが綴った明治の日々

佐野真由子氏のクララ・ホイットニーが綴った明治の日々を読んだ。このようなアメリカ女性が明治初期に日本に滞在し、少なからず日本に影響を与えていたということを全く知らなかった。更に、彼女は勝海舟の三男と結婚していたというのだから驚きだ。勝海舟…

プーチンとロシア革命

遠藤良介氏のプーチンとロシア革命 百年の蹉跌を読んだ。著者は産経新聞で11年半の長期にわたりモスクワ特派員としてソビエト連邦・ロシアで取材した記者だ。2017年から産経新聞のオピニオン欄に80回にわたって連載した記事に、加筆修正して一冊にまとめたの…

踏み絵とガリバー《鎖国日本をめぐるオランダとイギリス》

松尾龍之介氏の踏み絵とガリバー《鎖国日本をめぐるオランダとイギリス》を読んだ。あのジョナサン・スイフトの書いたガリバー旅行記のガリバーと踏み絵が関係しているということが一つの本書のテーマになっていて、そこから戦国から江戸時代にかけての日本…

撰銭とビタ一文の戦国史 (中世から近世へ)

高木久史氏の撰銭とビタ一文の戦国史 (中世から近世へ)を読んだ。 貨幣・銭とは まず最初に本書では貨幣・銭に関して次のように定義している。 交換手段と価値尺度の機能を持つ媒体の中で汎用性が高いもの、またはその機能そのものを、私たちは貨幣と読んで…

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語

田中靖浩氏の会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語を読んだ。私は歴史物の一冊として面白く読んだ。会計の歴史に関して書かれている本ではあるが、この本で実際の会計のことを学ぶのはジャンルが異なっていると思う。会計に関する歴史を…

大江戸御家相続 家を続けることはなぜ難しいか

山本博文先生の大江戸御家相続 家を続けることはなぜ難しいかを読んだ。いつの放送だったのか正確には覚えていないが、NHK BSプレミアムの英雄たちの選択で「14代尾張藩主徳川慶勝、15代尾張藩主徳川茂徳、会津藩主松平容保、京都所司代松平定敬が兄弟」とい…

徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか

早島大祐氏の徳政令 なぜ借金は返さなければならないのかを読んだ。本書は室町時代の徳政一揆・徳政令に関して研究した本で、室町時代を通じて、徳政一揆・徳政令がどのように変質していったかの様子がよく分かった。

世界の英語ができるまで

唐澤一友氏の世界の英語ができるまでを読んだ。英語の素となった言語は、現在のユトランド半島やオランダ・ドイツの北部沿岸地域で細々とつかわれた言語だったが、それがイギリスに根付き、現在では世界で最も使われる言語となっている。本書は「世界の英語…

大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済

高槻泰郎氏の大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済を読んだ。時代小説などを読んでいると、江戸時代に大坂の堂島に米市場があり、そこでは先物市場がすでにあって、これは世界的に見ても類を見ないことだというようなことを目にすることがある。本書は、この堂…

諡-天皇の呼び名

野村朋弘氏の諡-天皇の呼び名を読んだ。よく天皇一覧に載っている○○天皇というのは、明治以降は別として、全て漢風諡号だと思っていた。ところがこれが全くの間違いだということに気付かされた。実はあれは漢風諡号と追号の組み合わせなのだ。上皇の日本史 -…

ニュートンのりんご、アインシュタインの神 -科学神話の虚実-

アルベルト・A・マルティネスのニュートンのりんご、アインシュタインの神 -科学神話の虚実- (原題 Science Secrets The Truth about Darwin's Finches, Einstein's Wife and Other Myths)を読んだ。本書は科学者や科学についいて巷間に流布していて半ば伝説…

花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生

デイヴィッド グランの花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生(原題 Killers of the Flower Moon The Osage Murders and the Birth of the FBI)を読んだ。アメリカ先住民族はそれぞれの月に名前を付けた。5月はFlower Moonなので、本来は花月…

上方落語史観

高島幸次氏の上方落語史観を読んだ。本書は上方落語を切り口にして、幕末・明治の大阪の歴史・風土について解説した本である。

忘却する戦後ヨーロッパ 内戦と独裁の過去を前に

飯田芳弘氏の忘却する戦後ヨーロッパを読んだ。イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞したときにNHKで再放送された「カズオ・イシグロ 文学白熱教室」を見た。 この番組はイシグロ氏が学生たちに自身の創作について語り、学生と討論する番組だったのだが、その中…

公家たちの幕末維新-ペリー来航から華族誕生へ

刑部芳則氏の公家たちの幕末維新を読んだ。幕末から明治維新、明治政府の成立過程を公家の視点から描写したのが本書である。 公家たちの秩序 序章として、公家たちの秩序、まず家格が説明されている。摂家とか清華家というのは色々なところで見聞きするが、…

上皇の日本史

本郷和人先生の上皇の日本史を読んだ。本書では時それぞれの上皇のありようを大和時代の大王の時代から明治維新までのタイムスケールで解説している。

平城京のごみ図鑑

平城京のごみ図鑑を読んだ。タイトルを見て、「おや?」と思って読み始めたのだが、今までにない視点が得られた。本のタイトルにある通り、この本で解説されているのは奈良時代の平城京についてである。 遺物の大量発掘はゴミ捨て場から 地面の下から過去の…

“身売り”の日本史―人身売買から年季奉公へ

下重清氏の “身売り”の日本史―人身売買から年季奉公へを読んだ。サブタイトルにあるように日本における人身売買に関する研究だ。 人身売買と法律 売買される対象は古くは奴婢であったり、戦闘による人取りあったりしたようだ。この場合の人取りは戦闘員だけ…

大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実

山室恭子氏の大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実を読んだ。ここで報告されている分析はなかなか興味深い研究だ。江戸時代の文書・史料は偏って残っているので、わかることと分からないことの差が大きい。この研究はその差を何とか埋めようとす…

院政とは何だったか

岡野友彦氏の院政とは何だったかを読んだ。本書のタイトルは「院政とは何だったか」となっているが、まず論じられているのが荘園についてだ。この荘園についての説明が私が今まで理解にしてたものとは違っていて、非常に興味深く、今まで全く間違って理解し…

戦乱と民衆

戦乱と民衆を読んだ。この本は2017年10月に行われた国際日本文化研究センターの一般公開シンポジウム「日本史の戦乱と民衆」の内容をまとめた本で、倉本一宏、呉座勇一、フレデリック・クレインス、磯田道史の各氏が講演した内容と、講演後に行われた一般公…

コロンブスの不平等交換 作物・奴隷・疫病の世界史

山本紀夫氏のコロンブスの不平等交換を読んだ。勉強不足でコロンブスの交換という言葉を知らなかったのだが、最初に用いたのはアメリカの歴史学者のクロスビーで、1972年に発表したThe Columbian Exchangeから広まったということだ。日本語ではコロンブスの…

秀吉の接待

二木謙一氏の秀吉の接待―毛利輝元上洛日記を読み解くを読んだ。この本を読む前にサブタイトルに「毛利輝元上洛日記を読み解く」に気付かず、秀吉側の視点に立った本だと思っていたのだが、実際はこのサブタイトルの通りで、毛利輝元側の視点に立った文書をも…

兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実

小川剛生氏の「兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実」を読んだ。言わずと知れた徒然草の作者であるが、記憶が正しければ、私の若いことは吉田兼好という風に呼ばれていたと記憶している。しかし、本書のタイトルは兼好法師だ。なぜなら、兼好法師と吉田は…

あだ名で読む中世史

岡地稔氏のあだ名で読む中世史を読んだ。タイトルから内容を「めずらしかったり、面白いあだ名がついている王侯貴族を切り口にして、中世の歴史を概観するような内容だろう」と勝手に想像して、読み始めたのだが、全然違った。本書はなぜヨーロッパに「あだ…

南朝研究の最前線

南朝研究の最前線を読んだ。日本史料研究会の「研究の最前線」シリーズの一冊で、近年の南朝研究の成果を紹介している。本書の初めでも述べられているが、南朝とは何とも捉えがたい存在だと思う。南朝が正統であるとされているが、実態は南朝は負け組であり…