隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

真実の10メートル手前

米澤穂信氏の真実の10メートル手前を読んだ。これも語り手の視点は作品ごとに異なるが、大刀洗万智シリーズの作品だ。短編集で6作品収録されており、表題作の「真実の10メートル手前」のみが新聞社勤務時代の設定で、それ以外は新聞社を辞めてフリーになった…

王とサーカス

米澤穂信氏の王とサーカスを読んだ。さよなら妖精から10年後、大刀洗万智は務めていた東洋新聞社を辞め、フリーのジャーナリストになったばかりだった。フリージャーナリストとして雑誌の旅行記事の仕事をする予定になっていたが、仕事が始まるまでまだ時間…

さよなら妖精(単行本新装版)

米澤穂信氏のさよなら妖精を読んだ。主な登場人物は守屋路行、大刀洗万智、白河いずる、文原竹彦、そしてマーヤ。守屋と大刀洗は雨の降る日に偶然雨宿りしていたマーヤと出会う。そこから物語が始まった。だが、語られる物語は時間軸をさかのぼることになる…

「戦闘報告書」が語る日本中世の戦場

鈴木眞哉氏の 「戦闘報告書」が語る日本中世の戦場を読んだ。いつのころだろうか覚えていないのだが、いったい戦国時代はどのように兵士は戦っていたのだろうかという疑問が湧いてきて、それに関して本を読んで調べている。それで、自分の興味を満たすため…

日記堂ファンタジー

堀川アサコ氏の日記堂ファンタジーを読んだ。主人公は日記を売る店「日記堂」の女店主、紀猩子。何とも不思議な雰囲気を出している女性だ。狂言回しは、そこでアルバイトする3浪して大学生になった友哉。友哉は最初猩子が持っている茶畑で勝手に茶を摘み、そ…

いちいち“他人”に振り回されない心のつくり方

中島美鈴氏のいちいち“他人”に振り回されない心のつくり方を読んだ。私は隠居の身で、社会とはある種隔絶していて、他人に振舞わされるということはないのだが、「認知行動療法」というものにちょっと興味を覚えたので読んでみた。 本書では「同じ出来事なの…

壁の男

貫井徳郎氏の壁の男を読んだ。物語は栃木県北東部に位置するある町をフリーライターの鈴木が取材に訪れるところから始まる。その町は町全体の民家の壁に絵が描かれていることがSNSで拡散し、有名になっていた。しかしその絵は子供が書いたような稚拙な絵だっ…

「火附盗賊改」の正体

丹野顯氏の「火附盗賊改」の正体を読んだ。2017年の1月からアニメで鬼平を放送していて、それを見たら2つほど気になるところがあり、本書で調べてみた。気になったところとは、(1)長谷川平蔵が自分のことを「火付盗賊改めの長官」といったところと、(2)屋敷…

向こう側の遊園

初野晴氏の向こう側の遊園を読んだ。本書は何とも不思議なミステリーだ。閉演して打ち捨てられた遊園地の花園を管理するする青年がいる。その花園には動物のための秘密の霊園があり、青年が管理している。青年は依頼者から話を聞き、埋葬する代わりに一番大…

図説「合戦図屏風」で読み解く!戦国合戦の謎

小和田哲男氏監修の図説「合戦図屏風」で読み解く!戦国合戦の謎を読んだ。この本を読む前は、合戦図屏風から「戦国合戦の謎」が読み解けるのかと思ったのだが、実はそんなに単純な話ではなく、やはり謎は謎のままであった。 「はじめに」に以下のように書か…

ゼロから作るDeep Learning

斎藤康毅氏のゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装を読んだ。巷で良書として名高い本で、実際読んでみて、その評価には納得できた。この本に書かれていることが全て記憶に定着できているわけではないので、何かをすぐに作…

カムパネルラ

山田正紀氏のカムパネルラを読んだ。本書のタイトルから分かる通り、この小説は宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」と密接に関係している。 我々の世界と似ているけれどもちょっと違った世界での物語。16歳のぼくは母の遺言を履行するために、新幹線で岩手県の花巻に…

最長不倒距離

都筑道夫氏の最長不倒距離を読んだ。本書は物部太郎シリーズの2作目だ。この本も過去の何度か読んでいるが、久しぶりに読み返してみた。 一作目の最後の所で、物部太郎の父親が勝手に引き受けてしまった捜査をするために、片岡直次郎と物部太郎は長野県のス…

七十五羽の烏

都筑道夫氏の七十五羽の烏を読んだ。この本は既に数回読んでおり、今回久しぶりに読んだ。 ものぐさ太郎の子孫を自称する働くことが大っ嫌いな物部太郎が、父親からの働けというプレッシャーをかわすために、何でも屋の片岡直二郎に依頼して開設したゴースト…

マーク・ピータセンの図解英文法入門

マーク・ピータセンの図解英文法解説を読んだ。未だにたまに英語熱が発生して、英語を勉強したくなるサイクルがたまにやってくる。今年の夏も、大西先生が昔NHK教育でやっていたハートで感じる英文法のビデオが出てきて(存在すらすっかり忘れていた)、改めて…

風ヶ丘五十円玉祭りの謎

青崎有吾氏の風ヶ丘五十円玉祭りの謎を読んだ。本書も裏添天馬シリーズの一編だが、連作短編になっており、時間軸は第一作目の後から第三作目の直前となっている。収録されているのは5遍プラスおまけとなっており、最後の一編だけは天馬の妹の鏡華が主人公…

作曲少女

仰木日向氏の作曲少女を読んだ。本書はどのように作曲するのかということをライトノベル形式で書いた本である。 登場人物は作曲に憧れる高校二年生の山波いろはと同級生の白黒珠美の二人。いろはは夢中になれる何かを探していて、作曲に取り組もうとしたが、…

水族館の殺人

青崎有吾氏の水族館の殺人を読んだ。本書は裏染天馬シリーズの第二作目で、タイトルから分かるように今度の現場は水族館になっている。 風ヶ丘高校の新聞部が地元の水族館を取材しているたその時に殺人は起こった。それは展示されているレモンザメの水槽に人…

完全独習ベイズ統計学入門

小島寛之氏の完全独習ベイズ統計学入門を読んだ。今更ながら、POPFileを導入し、メールを振り分けを始めたのだが、なんとなくわかっているようで、よく判っていないベイズ定理とか統計について調べてみようと思ったのが、読み始めた理由だ。POPFileの方は2か…

体育館の殺人

青崎有吾氏の体育館の殺人を読んだ。本書は第22回鮎川哲也賞受賞作品で、裏染天馬シリーズの第一作目だ。 殺人事件は放課後の旧体育館で起きた。放送部部長が幕が下りていたステージ上で何者かに刺殺されていたのだ。ステージ袖には2か所の出口が体育館外に…

図書館の殺人

青崎有吾氏の図書館の殺人を読んだ。体育館の殺人と水族館の殺人と並んでいたのだが、目当ての本が図書館の殺人だったので、こちらから読み始めてしまった。よく調べてから読めばよかったと、若干後悔した。これらは同一シリーズなので、順番に読んだ方がい…

情け深くあれ 戦国医生物語

岩井三四二氏の情け深くあれ 戦国医生物語を読んだ。本書は織田信長が足利義明を奉じて京都に上洛した永禄11(1568)年から物語が始まる。京都の上京の内裏近くにある曲直瀬道三の啓迪院で修業中の英俊は国許の丹波で起きた事件のために、国を棄て、医生として…

殿様の通信簿

磯田道史氏の殿様の通信簿を読んだ。本書のベースになっているのは「土芥寇讎記」という元禄期に書かれた書物である。これは公儀の隠密が探査してきた諸大名の内情を幕府の高官がまとめたものということである。土芥寇讎記には当時の大名234名の人物評価を載…

江戸の経済事件簿

赤坂治績氏の江戸の経済事件簿を読んだ。タイトルから江戸時代に起きた金銭絡みの事件に関して例を挙げて解説している本かと思ったのだが、実際は「事件簿」というほど事件に関しては解説しておらず、著者の得意分野である歌舞伎の戯作や草子などからいくつ…

藤原道長の権力と欲望 - 「御堂関白記」を読む

倉本一宏氏の藤原道長の権力と欲望を読んだ。本書は藤原道長が記した「御堂関白記」を中心に同時代に生きた藤原実資の「小右記」、藤原行成の「権記」を併用して、藤原道長がどのように権力の中枢に上り詰めたかが書かれている。 なぜ、平安貴族は日記を書い…

片桐大三郎とXYZの悲劇

倉知淳氏の片桐大三郎とXYZの悲劇を読んだ。本作は難聴により引退した大物俳優片桐大三郎が名探偵を務めるミステリーだ。4編収録されていて、 ぎゅうぎゅう詰めの殺意。満員電車から降りた男が転倒し、死んでしまった。どうやら満員電車の中で、背後から、ニ…

リアクト

法条遥氏のリアクトを読んだ。本作はリライト、リビジョンに次ぐ3作目である。本作で一条保彦が園田保彦になる部分が描かれると思っていたのだが、それは誤りで、もう一度リライトの世界を再構築する物語となっている。 本作では新たにホタルという未来から…

リビジョン

法条遥氏のリビジョンを読んだ。この作品はリライトの数か月後(1992年の秋)の世界を舞台にしており、園田保彦の誕生を描く物語になっている。 千秋家の女性に代々受け継がれている不思議な手鏡がある。この手鏡を使うと未来を視ることができるのだ。この視る…

リライト

法条遥氏のリライトを読んだ。例外小説 - 隠居日録で見つけたうちの一冊で、これはタイムトラベラー物のSF小説だ。 1992年の夏、中学2年生の美雪は、未来からやって来た保彦と出会う。旧校舎崩壊事故に巻き込まれた彼を救うため、10年後に跳んで携帯電話を持…

例外小説

佐々木敦氏の例外小説を読んだ。本書は著者による小説の書評、文庫解説、作家論についてまとめられた本であり、著者による「例外小説」というものを扱っている。では、例外小説とは何かというと、「これは小説なのか?という疑問・問い・思索を喚起する『小…

美女二万両強奪のからくり (縮尻鏡三郎)

佐藤雅美氏の 美女二万両強奪のからくりを読んだ。本書は縮尻鏡三郎シリーズの一編だが、今回の物語は梶川三郎兵衛が物語を動かしている。 江戸幕府は寛政四(千七百九二)年二月に柳原に町会所・籾蔵を設置させた。これは民営の窮民救済、備荒貯蓄、兼金融機…

犬飼六岐氏の蛻を読んだ。尾張徳川家の下屋敷には戸山荘という庭園があり、その中には東海道の宿場町を再現した町山であったという。物語は享保、八代吉宗の時代に、この戸山荘の宿場町である御町屋に、当時の藩主の宗春がより実際に近い町屋を再現するため…

喪失

モー・ヘイダーの喪失(原題 gone)を読んだ。本書はハヤカワポケットミステリーの一冊で、版型は新書サイズであるが、上下二段組みになっていて、480ページ以上あるので読みごたえがあった。 ストーリはカージャックの発生から始まる。警察は最初単純なカージ…

耳嚢

近世風俗志 - 隠居日録をamazonで検索したときに、「この商品を買った人は...」の所に耳嚢が出ていた。こちらは、上・中・下と三巻出ているようなのだが、amazon.co.jpにも楽天booksにもいまだに新品で在庫されている。出版から25年ぐらい経過しているのに、…

近世風俗志

守貞謾稿という書物がある。なんでこの書物の存在を知ったのか正確には覚えていないが、何かの本で読んだのだと思う。それもほんの2年ぐらい前だったのだから、まだまだ知らないことが多いものだと、嘆息する。 著者の喜田川守貞は幕末の人で、もともとは大…

天皇諡号が語る古代史の真相

関裕二氏監修の天皇諡号が語る古代史の真相を読んだ。本書は新書版なのだが、ページ数が466ページあり、通常の新書の二倍近くはあるので、読む場合はその点を注意する必要があると思う。また、最後まで読んで気づいたのだが、本書は関裕二監修になっていて、…

男嫌いの姉と妹 町医北村宗哲

佐藤雅美氏の男嫌いの姉と妹 町医北村宗哲を読んだ。本巻で北村宗哲シリーズの完結である。あたらに仙台伊達家浪人長井半四郎が登場し、物語に深くかかわっていき、結局は半四郎を中心にして、物語が収束することになる。 江戸の夜の街は長井半四郎の登場に…

大統領の冒険

大統領の冒険を読んだ。本書はキャンディス・ミラードの"The river of doubt"(謎の川)の翻訳であり、第二十六代アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトのアマゾンの未開の川の探検記である。 副大統領から、第二十六代アメリカ大統領になったセオドア・ルーズ…

八月の路上に捨てる

伊藤たかみ氏の八月の路上に捨てるを読んだ。以前SmartNewsの読書のタブに以下の記事が配信されていて、それを見て興味を持ったので読んでみた。2006年の芥川賞受賞作ということである。 www.ebookjapan.jp ここに書かれていることは、ある意味衝撃的だった。…

粘膜黙示録

飴村行氏の粘膜黙示録を読んだ。著者はホラー小説でデビューしたということなのだが、その作品は全然読んでおらず、以下のページを見て興味を持ったので、読んでみた。 hon.bunshun.jp 打ち合わせを兼ねての酒席で何気なく派遣工時代の話をしたところ、同席…

口は禍いの門 町医北村宗哲

佐藤雅美氏の「口は禍いの門 町医北村宗哲」を読んだ。本巻では江戸の裏の世界は正に戦国時代に突入している。黒門の喜助は両国広小路の伊右衛門に毒を盛らせて亡き者にした。伊右衛門の後を継いだのが、熊五郎という子分だが、力がなく、縄張りを竜次にとら…

向かい風で飛べ!

乾ルカ氏の向かい風に飛べ!を読んだ。本書は室井さつきと小山内理子が主人公の青春小説だ。物語はさつきが父の都合により札幌から沢北町に引っ越してきた小学五年生から始まる。道の職員として麦の品種改良の研究をしていたさつきの父は、実際に自分でも麦…

やる気のない刺客 町医北村宗哲

佐藤雅美氏のやる気のない刺客 町医北村宗哲を読んだ。シリーズの2作目で、本巻で物語が大きく動き出した。 江戸の主だった顔役は宗哲と縁のある黒門の喜之助、両国広小路の伊右衛門、市ヶ谷八幡前の庄之助、二丁町の安五郎、深川門前中町の辰五郎、本所鐘撞…

武士に「もの言う」百姓たち

渡辺尚志氏の武士に「もの言う」百姓たち 裁判で読む江戸時代を読んだ。本書は第一部と第二部に分かれており、第一部は江戸時代の訴訟全般について解説しており、第二部は信濃松代藩真田家文書に残されていた南長池村での出入筋(民事訴訟)の記録をたどりなが…

たったひとり

乾ルカ氏のたった一人を読んだ。本作はジャンル的にはホラーに属するようだが、ミステリー要素もある小説だ。 帝都大学廃墟探索サークル時旅(ときたび)の5人のメンバーがN県にある打ち捨てられ廃棄になっているラブホテルのホテル・シャトーブランシュを訪れ…

町医 北村宗哲

佐藤雅美氏の町医 北村宗哲を読んだ。本シリーズは今までに4冊出ており、すでに完結している。本シリーズの主人公は北村宗哲という医者で、芝明神前で開業医をしている。宗哲は医者の倅であったが、妾の子であり、本妻に長男がいたため、父が死んだことによ…

ハルさん

藤野恵美氏のハルさんを読んだ。本作は、ちょっと頼りなさそうなビスクドールの人形作家の父親春日部晴彦(通称ハルさん)が娘の風里(通称ふうちゃん)の子育て中に遭遇したちょっと不思議な謎を解く日常のミステリー。その謎を解くのは、もうこの世にはいない…

デカルトの密室

瀬名秀明氏のデカルトの密室を読んだ。SFにカテゴライズされると思うのだが、ミステリー要素も含まれている。が、実際に明確に謎が解決されるわけではない。ストーリーの中にいくつかの謎が示唆されている例えば、第一章の最後でケイイチがフランシーヌをを…

頼みある仲の酒宴かな (縮尻鏡三郎)

佐藤雅美氏の頼みある仲の酒宴かなを読んだ。しくじり御家人こと拝郷鏡三郎シリーズの一編。おなじみの北の臨時廻り梶川三郎兵衛、剣術道場主の鳥羽誠十郎に、今回は丹州浪人柴田帯刀が物語に絡んでくる。 老婆ためは日本橋の白木屋の地面が自分のものだと北…

刀の日本史

加来耕三氏の「刀の日本史」を読んだ。刀と見聞きすると、なんとなく日本刀のことを頭に思い浮かべていたが、本書に記述されているのは日本刀だけではなく、いわゆる剣も範疇に含まれている。そのため、まず神話(古事記・日本書紀)から始まり、古代の刀につ…